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2022.10.27 08:00

【英新首相就任】混乱と分断の修復を急げ

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 インフレから国民生活を守り、傷ついた政治の信頼を回復させる責務がある。強引な手法が受け入れられないのは明らかだ。引き継いだ課題に誠実に向き合う必要がある。
 英新首相にリシ・スナク元財務相が就任した。インド系の42歳で、20世紀以降最も若い。アジア系の首相就任は初めてとなる。人種的多様性が進んできた近年の英政界を映し出す格好になった。
 トラス前首相は在任50日で退陣した。ロシアのウクライナ侵攻の影響などで記録的な物価高が生活を圧迫している。そうした中で、経済成長を優先した大型減税策を打ち出したことに市場は大きな動揺を見せ、与野党から強い批判を受けた。
 スナク氏は前政権の過ちを認めた上で、信頼回復に努める考えを表明した。最優先に取り組むと強調したのは経済安定化だ。景気後退を回避するために多様な対策が求められている。経済政策は財政規律を重視する姿勢を示した。
 新内閣は主要閣僚を続投させ、与党保守党内の融和への動きを演出した。分裂した党の修復を急がなければならない。分断が深まるようでは、不祥事で失墜した政権与党の信頼回復など期待できはしない。
 ジョンソン政権下で財務相に登用されたスナク氏は、新型コロナウイルス対策で国民への財政支援に尽力した。ジョンソン元首相の後継候補ともみられた。しかし、政権で相次いだ不祥事や不誠実な対応を受けてスナク氏らが相次いで離反し、退陣へと追い込む結果となった。
 前回党首選では決選投票に進み、争点の経済政策を巡りインフレ抑制を優先すると主張したが、大規模減税を訴えたトラス氏に敗れた。候補者を絞り込む段階では終盤まで首位を保ち本命視されたが、ジョンソン氏に近い議員らがスナク氏の勝利を阻む対応を取ったとされる。
 今回の党首選は対抗馬が撤退し、スナク氏が無投票で選出された。党下院議員の過半数から支持を得ていたようだ。ただ、党内の対立感情が解消されたとは言えないだろう。こうした構図では結束や安定した政権運営は難しくなる。
 保守党は下院で圧倒的多数を維持しているものの、支持率は最大野党労働党が大きく上回る。党勢回復は険しいが、指導力を発揮して堅実な取り組みを重ねていくしかない。
 インフレ対策は急務だ。生活を支援しつつ、財政規律を重視して市場の信頼を呼び戻す必要がある。
 外交では、ウクライナ情勢など難局への対応が迫られる。スナク氏はウクライナ支援の継続を表明している。侵攻の長期化で各国の対ロ姿勢に違いも出てきた。国際社会の結束を促す取り組みが不可欠だ。
 軍事圧力を強める中国との関係も注目される。バイデン米大統領とは中国に対抗するため連携強化の重要性を確認した。ただ、経済関係を優先して対中強硬姿勢を軟化させるとの見方もあり、手腕が試される。
 日英が連携を強め、幅広い分野で協力を深化させることも重要だ。

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