2022.10.20 08:00
【コロナ第8波】「先手の準備」を確実に
この冬には新型コロナとインフルエンザの同時流行が起きる可能性があると、海外の状況などから取りざたされる。政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は、次の流行「第8波」は第7波以上に感染者数が増えかねず、感染拡大時の行動制限を含めた対策の在り方を議論しておく必要性を指摘している。
大規模流行となった際に医療逼迫(ひっぱく)を防ぐため、厚生労働省は重症化リスクに応じた外来受診の流れを示した。高齢者や基礎疾患がある人、子どもらには発熱外来の受診を推奨する。一方、リスクが低い人は新型コロナの検査キットでの自己検査や、インフルエンザのオンライン診療を促す。
導入は流行状況に応じて自治体が判断する。適切な診断ができるのか懸念する声もあり、細やかな制度設計と周知が必要だ。
岸田文雄首相は、先手の準備の必要性を強調した。過去には、最悪の事態を想定すると訴えている。そうした取り組みを重ねることで危険性をできるだけ排除していきたい。
第7波では、発熱外来への患者の殺到や検査キットの不足など、対応が後手に回った。新規患者数の多さに全数把握を見直して事務量の軽減を図ったが、感染動向の正確な評価ができない課題も指摘された。
言うまでもなく、感染者への対応だけでは不十分だ。国立感染症研究所などのまとめによると、今年1~6月の全体の死者数は例年の水準に基づく予測値を超えている。新型コロナ感染による直接死のほか、医療が逼迫したことで医療機関にアクセスできずに新型コロナ以外の疾患で亡くなった事例や、経済的な困窮による自殺などが考えられるという。
国内の死者数は高齢化の影響で増加する中、2021年は戦後最多となった。今年は7月以降も多数の死者が出ているため、21年を上回るとの見方が出ている。減少へ向け多面的な取り組みが不可欠だ。
政策はウィズコロナへ向けた転換が進む。全国規模の旅行割引が再開された。水際対策も大幅に緩和され、入国制限はほぼコロナ禍前に戻った。人の往来の活発化による経済回復が期待される。
当然、感染拡大防止とのバランスは軽視できない。新型コロナのオミクロン対応ワクチン接種は、首相が目標とする全国で1日100万回を大きく上回る態勢が整うが、実績は大きく下回っている。説得力ある働き掛けが不可欠だ。
首相は先の所信表明演説でも、マスクは屋外では原則不要と訴えたが、現状はまだ着用している人が多い。警戒を解きたくない思いが根強いということだろう。それを受け止めることが対策の基本となる。
政府と専門家のコミュニケーション不足も指摘される。これでは政策の足元が揺らぎかねない。