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2022.10.16 08:00

【鉄道開業150年】存在価値見つめ直そう

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 日本初の鉄道が、1872(明治5)年10月14日に新橋―横浜間で開業してから150年を迎えた。
 日本の近代化を支え、国民生活に変化と利便性をもたらしてきた鉄道は、今もなくてはならない輸送・交通手段だ。
 一方で、乗用車の普及と高速道路網の整備などで存在感は徐々に薄れ、近年は少子高齢化・人口減少のうねりにも直面。新型コロナウイルス禍による移動控えも重なり、ローカル線には存廃論議が付きまとう。
 新幹線開業や、日本国有鉄道(国鉄)の発足と民営化など、日本の鉄道にはこれまで多くの転機があったが、今また大きな曲がり角を迎えていると言えるだろう。
 高知県での初開業は1924年3月30日、須崎―日下(日高村)間の25キロ。県内の鉄道史も、間もなく100年を迎える。これらの節目を、改めて鉄道の存在意義や在り方を考える機会にしていきたい。
 現在、最大の課題になっているのは、採算性の悪いローカル線をどう維持していくかということだ。
 今年7月、国土交通省の有識者検討会は、利用実績が一定条件を下回る区間は、JRと地元自治体で在り方を協議するよう提言した。地元の反発が強い「廃線」の選択肢も含む、踏み込んだ内容だった。
 背景には、人口減少とコロナ禍による乗客減があり、特に、収益力の高いJR東日本やJR西日本が連年の赤字決算になったことが大きかったとみられる。来年度から対象路線の協議が始まる見通しだ。
 高知県の立場から言えば、経営構造が厳しいJR四国にはこれまで国の支援があり、赤字路線の見直し圧力が極端に高まることはなかった。それが、全国的な鉄道不振に伴って一律的な赤字路線対策が示され、今後はその枠の中での対応を迫られる形になったと言える。
 JRは前身が国鉄で、民営化も国策だったため、自治体側はたびたび「路線維持は国とJRの責任」と主張してきた。運行会社の経営努力は当然だ。だが、厳しくなる環境に、自治体が積極的に関与していく必要性が増しているのは事実だろう。
 協議では、路線を存続させるのなら自治体の支援や負担が焦点になるのが避けられまい。線路や車両の維持管理費用などを公費で担う「上下分離方式」の導入も選択肢に挙がってくるかもしれない。
 鉄道は観光や地域活性化の基盤となり、環境に対する負荷も小さい。鉄道の存在価値や活用策、地域の負担がどうあるべきかなど、住民を巻き込んだ議論が求められる。
 鉄道はその歴史の中で高速化を追い求め続けてきた。この9月には西九州新幹線が部分開業。東京―名古屋間では、時速500キロのリニア中央新幹線の建設も進む。四国新幹線の待望論も根強くある。
 移動時間の短縮、新技術の実用化には確かに希望がある。だが、膨大な投資と在来線の衰退も招く。それに見合うものかどうか、よく考えていく必要があろう。

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