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2022.10.15 08:00

【32年ぶり円安】景気への悪影響を防げ

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 急激な円安が企業の業績や暮らしにのしかかり、悪影響が危惧される。景気の動きに警戒が怠れない。きめ細やかな対策が必要だ。
 円相場は一時1ドル=148円台に急落した。バブル景気終盤の1990年8月以来、32年ぶりの安値だ。日本が金融危機にあった1998年8月に付けた147円64銭を下回る円安水準となった。
 日銀は金利を低く抑える金融緩和を継続する方針を示している。米国をはじめ主要国は物価高抑制などを目的に金融引き締めに動く。違いが鮮明になり、為替レートの急変動につながっている。
 米国は物価の抑え込みをもくろむが、米消費者物価指数の伸びは依然高い。9月の上昇率は金融市場の事前予想を上回った。ここ3カ月は伸び率が縮小していたが、物価の高止まりを印象づけた。当面は大幅な上昇が続くとの見方が出ている。
 米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めを緩めそうにない。次回11月の連邦公開市場委員会(FOMC)は、引き続き大幅な政策金利引き上げを決めるとの観測が浮上している。
 日本との金利差は拡大し、円相場は今年初めと比べて2割超下落している。政府と日銀は9月に約24年ぶりに円買いドル売り介入で急激な円売りに対抗した。いったんは円が買い戻されたが、効果は持続しなかった。再介入が注視される。
 新型コロナウイルス禍からの経済回復やロシアのウクライナ侵攻により、エネルギーや原材料の輸入価格は高止まりしている。円安はドル取引の多い輸入品の円建て価格をさらに押し上げる。
 9月の国内企業物価指数は前年同月比9・7%上昇し、19カ月連続で前年を上回った。全国消費者物価指数は8月は2・8%上昇と31年ぶりの伸びとなった。輸入コストの増大や物品の値上げは、企業経営や家計を圧迫する。新たに策定する総合経済対策の実効性が問われる。
 一方、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、利上げの影響に配慮することで一致した。先進国が利上げで高インフレ抑制を図る中、ドルは各国通貨に対して独歩高が続く。ドル建て債務を抱える途上国は資金流出や、ドル高で返済のめどが立たなくなる恐れがある。
 信用危機に陥るリスクを回避しなければ、世界経済は大きな打撃を受けかねない。経済の減速を防ぐ手だてを講じる必要が高まっている。G20は具体策ではまとまれなかったが、継続的な交渉が不可欠だ。
 世界経済の見通しは悪化し、日本の輸出は減速しそうだ。日本の稼ぐ力を示す経常収支は低迷が長期化する懸念がある。複数の海外通貨と比べた円の購買力を示す「実質実効為替レート」は51年ぶりの低水準になった。円の力は弱まっている。
 賃金上昇を伴う持続的な物価上昇や金利差の是正が不可欠だが、簡単には実現しそうにない。現在の危機を乗り越えるとともに、長期的な視点に立った対策が求められる。

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