2022.10.14 10:50
【劇場びーちぶの怪人 #1】最年長M―1王者「錦鯉」 実は頭脳派、隆がすごい
「錦鯉」の渡辺隆(中央)と長谷川雅紀(右)(絵・チャーミングじろうちゃん)
東京都豊島区の小さなお笑い専門劇場「びーちぶ」が輩出した個性豊かなSMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)芸人たちを、同じ釜の飯を食べた芸人兼漫画家のチャーミングじろうちゃんが紹介する。
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昨年末の「M―1グランプリ」で史上最年長の優勝を果たした「錦鯉」(長谷川雅紀、渡辺隆)。見た目が派手で全力のバカをやる雅紀さんのイメージが強いと思うが、雅紀さん自身が「錦鯉は渡辺隆です」と言う通り、実は隆がすごい。
コンビのネタを作るのはもちろん、「バイきんぐ」、ハリウッドザコシショウの単独ライブでは必ず作家で入って的確なアドバイスをする。SMAきっての頭脳派だ。
さらに伝えたいのが、先輩に愛される力。裏では先輩に仏のように優しく、舞台では人が変わったようにいじりまくって笑いにしてくれる。普段の気遣いがあるからこそ成立する笑いで、これができていない後輩が多い。
隆は前のコンビを2008年に解散してやる気を失っていたが、12年に雅紀さんと意気投合して錦鯉を結成。「俺、あの人食わせたいんだ」とキラキラした目で言ってきたことを、今でも覚えている。ドラマのようなせりふだが、登場人物は全員おじさんだ。
錦鯉はすぐには売れなかったが、18年ごろに毎月新ネタ10本のライブを始めた。月に1本ネタを作ればいいというのが普通なので、10倍の努力を始めたことになる。ふらふらになってネタを覚える雅紀さんを見て、心配になったくらいだ。
こうしてライブシーンでますますウケるようになり、事務所ライブもほとんど1位。そしてM―1優勝…。だから高齢芸人達は勘違いしない方がいい。才能があって、10倍の努力をしてやっと50歳と43歳で売れたのだ。「いつか売れる」なんて続けるだけでは一生売れやしない。
最後に、雅紀さんはとにかくお笑いに愛された男。とあるライブで「チョロQ」のエピソードトークを準備していたが、「チョロQ」と言っただけで大爆笑。おじさんとチョロQという言葉のギャップだけでウケ続け、結局本編の話ができませんでした。
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チャーミングじろうちゃん 1977年福岡県生まれ。97年からお笑い芸人として活動を始め、近年は漫画家としての仕事がメイン。
(c)KYODONEWS