2022.10.14 08:40
〝幻のコーヒー〟20年ぶり復活 高知県東洋町甲浦 閉店喫茶の味 高齢者の集いで提供
開店時から使い続ける電動ミルで豆をひく坂東経子さん(写真はいずれも東洋町甲浦)
家族とともに喫茶店「リバージュ」を営んでいた坂東経子さん(85)=甲浦。「コーヒーはうちのオリジナルブレンド。味はずっと変わらんよ」とほほ笑む。
約40年の間変わらない味で入れ続けてきたコーヒー
しかし、阪神地方と東洋町、土佐清水市を結んでいたフェリーむろとが1999年に座礁事故を起こし、2001年には運航を休止。乗船客の来店が途絶えた喫茶店も、経営が苦しくなり、ほどなく閉店した。
店は閉めたが、コーヒーとの付き合いは坂東家で続いた。コロンビア、ブラジル…。喫茶時代と同じ問屋から豆を仕入れ、企業秘密というブレンドの一杯を愛飲。2020年のある日、経子さんが高齢者の集まりなどに参加するあったかふれあいセンターの担当者に振る舞ったところ、「おいしい!」。センター利用者にも味わってもらうことになり、久しぶりにリバージュの味が世に出ることになった。
「いい香り」「ブラックでも飲みやすい」。往時を懐かしみ、話に花が咲いた。その後も、2カ月に1回ほどのペースで、センターの昼食後のお楽しみとして提供されている。変わらない味を守ってきた経子さんは「皆さんに飲んでもらえてうれしい。ますます忘れられないコーヒーとなった」と喜ぶ。
ただ、センター利用者もめったに楽しめないリバージュの味。いつしか、〝幻のコーヒー〟と呼ばれるようになったそう。一般には提供されておらず、今後もその予定はない。まさに幻の味―。(板垣篤志)