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2022.10.12 08:00

【ウクライナ攻撃】ロシアは「報復」をやめよ

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 ミサイルは商業施設や公園などの非軍事的な施設に着弾し、大勢の民間人が犠牲になった。ロシアによる報復行為は正当化できず、強く非難する。攻撃の中止と軍部隊の撤収を改めて求める。
 ロシア軍は、ウクライナの首都キーウ(キエフ)中心部を含む全土をミサイルで一斉攻撃した。攻撃は今年2月の侵攻開始以降、最大規模とされ、全土で100人以上が死傷したと伝えられる。
 プーチン大統領は、攻撃の2日前にあったクリミア橋の爆発を、「ウクライナによるテロ行為」と断定した。報復措置として、軍やエネルギー関連施設に大規模なミサイル攻撃を行ったと表明した。
 クリミア橋はロシア本土と、2014年にロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島を結び、実効支配の象徴とされる。ウクライナ南部に展開するロシア軍の重要な補給路になっている。
 その橋で、走行中のトラックが爆発し、自動車道の一部が崩落した。並行する鉄道を走っていた貨物列車は、燃料タンクに引火して火災が起きている。
 プーチン氏はクリミア併合宣言の翌日に架橋を指示し、開通時には自らがトラックを運転して渡り初めをしている。それほど思い入れがある橋の炎上、崩落は軍事的な失態であり、屈辱だったことは想像に難くない。危惧された強硬な対抗措置が現実になってしまった。
 ウクライナ政権側からは橋への攻撃を歓迎する声が上がるが、関与は明らかになっていない。もっとも、クリミア橋を軍事作戦の標的とする意見は以前からあった。
 ただ、この橋への攻撃はロシア側の強い反発を招くことが想定され、核兵器の使用さえ誘発する恐れが指摘された。このため米政権は、ウクライナ側が確保している地域からの長距離攻撃が可能となる武器の供与には慎重な姿勢を続けてきた。
 ロシアの一斉攻撃を受けて、米欧は非難を強めている。国連のグテレス事務総長は「戦争を激化させる。容認できない」と批判した。バイデン米大統領は、防空システムを含めウクライナ防衛に必要な軍事支援を続ける考えを打ち出した。
 ウクライナ東部・南部4州では親ロ派が「住民投票」を強行した。それを受けてプーチン氏は4州の併合を宣言し、手続きを完了した。実効支配地域にあり、軍事拠点化したザポロジエ原発は「国有化」した。欧州最大の原発が不安定な状況に置かれている。極めて危険だ。
 ウクライナ軍は、複数の州で集落を奪還しているようだ。これを受けてロシアでは軍幹部の解任も伝えられる。国内での不満をそらす狙いが指摘され、そうした状況下では無差別攻撃が激化しかねない。
 国際社会の結束した対応が必要となる。中国は支持も批判もせずに「対話による解決」を訴える。ならば対話を促すための関与が不可欠だ。戦闘の拡大が懸念される。犠牲を大きくしてはならない。

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