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2022.10.07 16:40

覚醒剤の効き目「イメージと違った」 橋爪功氏の息子・遼さんと高知東生さんが率直に語る 

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俳優の橋爪遼さんと高知東生さんが、違法薬物を使った体験について率直に語った対談(2022年10月、東京都内)

俳優の橋爪遼さんと高知東生さんが、違法薬物を使った体験について率直に語った対談(2022年10月、東京都内)


 俳優の橋爪遼さん(35)=2017年に覚醒剤取締法違反で有罪判決=が4日、事件後初めてメディアの前に登場し、高知東生さん=高知市出身、16年に同法違反で有罪判決=に近況を語りました。対談はざっくばらんな雰囲気で進み、2人は「覚醒剤の効き方はイメージと違った」など、体験を率直に話し合いました。 

 依存症は、医学的には「完治はしないが回復できる病気」とされています。メディアの質問に答えた部分も合わせて再構成し、対談形式で詳しく紹介します。 

■対談の参加者 

左から松本俊彦医師、高知東生さん、橋爪遼さん、田中紀子さん

左から松本俊彦医師、高知東生さん、橋爪遼さん、田中紀子さん

橋爪遼さん:俳優。1986年生まれ。父親は俳優の橋爪功氏。2017年に覚醒剤取締法違反(使用)で懲役1年6カ月執行猶予3年の判決を受けた。保釈後にカメラの前で一礼した後、約5年ぶりにメディアの前に登場した。

高知東生さん:俳優。1964年生まれ。2016年に覚醒剤取締法違反(所持、使用)で懲役2年執行猶予4年の判決を受けた。20年9月に執行猶予が満了し、ネットドラマで俳優に復帰。体験を語り合って回復を目指す「自助グループ」に通いながら、啓発活動を続ける。

松本俊彦医師:薬物依存症治療の第一人者。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長。

田中紀子・ギャンブル依存症問題を考える会代表:ギャンブル依存症者や家族の支援、啓発活動などを幅広く手掛ける。自身もギャンブル依存症当事者。

 対談は東京都千代田区の会場で行われ、2019~21年に「依存症報道グッド・プレス賞」を受賞したメディアと、依存症支援の関係者らが耳を傾けました。

■有名人を引きずり下ろす快感

体験を話す橋爪遼さん

体験を話す橋爪遼さん

橋爪さん:高知さんという先駆者がいるわけだから、安心していいのは重々承知してるんですけど、やっぱり緊張しますね…。

田中代表:今はどういう生活を?

橋爪さん:2017年にメディアの前で一礼をさせていただいてから、直行で奈良にある回復施設に入って、プログラムを3年受けました。無事卒業証書を頂いて、今はバイトを2~3個しながら1人暮らししています。

田中代表:5年の間、再発せずに来られたんですね。

松本医師:すごいことですね。そろそろ社会の中に足を踏み入れてもいい頃合いだと思います。

橋爪さん:回復していく中で、「もう一度お芝居したい」という気持ちを持ったり、「でもそんなの無理だ」って思ったり、(考えが)循環するような状態で。正直分からない部分はありますが、「表現したい」という気持ちに純粋に進んでいきたい思いはあります。

田中代表:世の中は「芸能界に戻ろうなんて思うな」みたいな雰囲気ですよね。再起を応援した人がまた叩かれることもあったりして。

松本医師:目立っていた人を引きずり下ろす快感をみんながシェアし合っている感じはありますね。そういうエンターテインメントになっている。若い人は少しずつ変わってきてる気はしますが。

■逮捕で「何もかも終わった」

田中代表:遼さんが覚醒剤を始めたきっかけは?

橋爪さん:もともと、いわゆる危険ドラッグを20代中盤から使っていました。そしたらちょうど覚醒剤を持ってる人がいて、「これ(危険ドラッグ)やってるんだからいいかな」と。まあなんとかなるだろうっていう、とんでもない考えを持ちながら…。

田中代表:高知さんもそう思ってたんですよね。自分だけは捕まらないと思ってるんですよね、みんな。

高知さん:思ってたね…。俺は大丈夫だと。

田中代表:高知さんって最初、一緒に使った女性が捕まったから、自分もついでに捕まったって思ってた。でもこの間、麻薬取締官(麻取)が「いや、ずっと高知さんを張ってました」って言ってましたよね。

高知さん:そう。(自分を逮捕した)麻取がね、講演を聞きに来てくれてたんですよ。それで話して、ばれてないつもりだったけど、最初からばれてたことが分かった。 

田中代表:遼さんは、逮捕された瞬間、どう思いました?

橋爪さん:もう、終わった…と。何もかもが終わったという気持ちでした。

田中代表:当時は2世バッシングがすごかったですよね。「甘えてるから使ったんだ」みたいな。

2019年、高知市内で開かれた講演会で高知東生さんに優しいまなざしを向ける松本俊彦医師。高知さんの主治医だった

2019年、高知市内で開かれた講演会で高知東生さんに優しいまなざしを向ける松本俊彦医師。高知さんの主治医だった


■「いつでもやめれる」と思っていた


田中代表:橋爪さんと高知さんは、最初に覚醒剤を使った時はどんな感じでした? よく「拍子抜け」って言いますけど。

高知さん:そう、実際はね。そんな目くるめく~みたいな感じじゃない。だから逆に、いつでもやめられるって思ってしまう。

橋爪さん:自分も、使ってない時期もあったし、仕事の前は絶対使わないとか自分のルールも作ってたので。だから「やめてるじゃん、いつでもやめれる」という気持ちがありました…。

松本医師:薬物事件があるたびに、薬物についてテレビで話してくださいって言われる。「1回やるとゾンビになっちゃう」みたいな内容を求められたり。それは医学的に言うと誇張しているんです。最初は、使っても言われてるほど気持ちよくもないし恐いことも起きない。だから、みんな「何だ大丈夫じゃん」って、自分の判断で使い続けてしまう。

日本で長く行われてきた「ダメ。ゼッタイ」教育。浸透しているが、この視点だけでは防げないと専門家は指摘する(高知県内、1997年撮影)

日本で長く行われてきた「ダメ。ゼッタイ」教育。浸透しているが、この視点だけでは防げないと専門家は指摘する(高知県内、1997年撮影)


田中代表:
やった人全員がゾンビになってたら、さすがにすぐやめますよね。

松本医師:みんなすぐ逮捕されるだろうしね。

■有名俳優「2世」に生まれ…

田中代表:薬物を使った背景が気になりますよね。高知さんは幼少期に親がいなかったとか、お母さんが自殺したとか(詳しくは連載でどうぞ)分かりやすい背景があった。それで上京してきて、憧れの人に薬物を勧められたんですよね。

高知さん:うん。理想で目標にしてる人。俺もこの人みたいになりてえって思える人が、おしゃれに薬物を使ってた。自分も仲間になりたくて、(薬物が)回ってきた時はうれしかった。

田中代表:遼さんも仲のいい人と使ったんですよね。

橋爪さん:そうです。肩書とか関係なく、自分個人として付き合ってくれる人だったと思います。

田中代表:「ジュニア」としてじゃなくて、ありのままの遼さんを見てくれる友達だったんですね。ということは、2世として生まれてきたことに、少なからずプレッシャーがあった?

橋爪さん:うーん…なんだろうな。父がたくさんメディアに出ている中で「俺が何かしたら駄目だ」「いい息子であろう」っていうふうに子どもの頃から思い続けていたのかも。「息子さん」って言われることは当たり前だったので、意識してはなかったし、自分が同じ俳優という職業を選ぶならさらに言われることが大前提だって、頭ではちゃんと理解してます。ただ、自分が思ってないところで、何かたまってる思いがあったのかなと。

田中代表:高知さんだってね、あの大女優の元旦那ってずっと言われるわけですよね。きっと遼くんのプレッシャー分かりますよね。

高知さん:うう…。まあね。

高知競馬の人気牝馬「ハルウララ」に会いに来た高知東生さん(2004年撮影)

高知競馬の人気牝馬「ハルウララ」に会いに来た高知東生さん(2004年撮影)

■家族がやらかした人は、たくさんいる

橋爪さん:回復施設に入った時は正直、同じように入所してる薬物依存症の人たちと「一緒にしないで」と思っていました。誰も信じられなかったし。でも、語り合ううちにみんなと仲良くなってきて、もう少し続けようかなと思えたんです。スタッフさんも、自助グループに通ってきてる仲間も、キラキラしてて、楽しそうに話してた。

松本医師:そうだよね。最初はみんな警戒するけど、同じ問題を抱えた人たちと安心できる場所でいろんなことを分かち合う中で、気付いていくものなんです。そこはもう、僕ら専門家にも、何もできない領域で。

田中代表:芸能人じゃなくたって、家族がやらかした人なんていうのはこの世にたくさんいるわけですよ。

松本医師:社会が受け入れてくれて、応援してくれる雰囲気ができれば、回復する人はどんどん増えると思いますね。

事件後初めてのメディア対応を終えた橋爪遼さんを拍手でたたえる高知東生さん

事件後初めてのメディア対応を終えた橋爪遼さんを拍手でたたえる高知東生さん


高知さん:自分もマスコミにたくさん叩かれて、世間みんなに悪く思われていると思ってた。でも実際には、今日一日を最善を尽くして生きてれば、「世の中には理解がある人も、こんなにたくさんいるんだ」と分かった。一歩踏み出せば、新たな居場所ができる。そこは当事者の皆さんに伝えたい。

橋爪さん:自分も、インターネット上の「あんな息子は…」という意見を見て、「必要とされてない」「挽回することはできない」という気持ちが強くなってしまった時期がありました。今は、そのコメントも一つの真実ですが、周りの応援してくれる人の言葉を信じることが一番いいのかも…とも思えます。

田中代表:回復のプロセスを語るっていうのは、今まで日本に欠落していた部分だと思う。捕まった時はバーンと叩くけどね。

松本医師:そうですね。当事者にそういう役割をさせるのは医学的に見てどうなのかという点はあるけども、高知さんや橋爪さんのような目立つ人が発信することで、きっと救われる人はたくさんいる。回復のプロセスを見ていただくことが、みんなに回復を信じてもらうことにつながると思います。

(構成=メディア企画部・竹内悠理菜)

連載「孤独の病・依存症 高知東生さんに聞く」全編はこちら!
(1)薬物を「やめられなかった」理由とは
(2)薬物との関わりを詳しく
(3)覚せい剤、どう使った?
(4)薬がコントロールできなくなり…
(5)任侠育ち 影響は?
(6)仲間と出会い、回復へ 
(7)誰でもそうなる可能性

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