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2022.10.04 08:00

【所信表明演説】厳しい意見と向き合え

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 国民の厳しい声に真摯(しんし)に、謙虚に、丁寧に向き合っていく。そう誓ったからには、取り組んでいくしかない。言葉だけに終わるようでは大きな失望を招いてしまう。
 臨時国会が召集され、岸田文雄首相は所信表明演説を行った。自らの政治姿勢を取り上げて、厳しい意見を聞くことが原点にあると訴えたのは、向かい風の強まりを感じ取ってのことだろう。
 首相は就任後初めてとなる昨年10月の所信表明演説で、政権運営に臨む姿勢として、丁寧な説明で信頼と共感を得ると強調した。しかし、その期待通りに進んでいるとは言い難いのは、最近の内閣支持率の低下に表れている。
 安倍晋三元首相の国葬は、決定の経緯や法的根拠が不明確なことが指摘された。しかし、それに対する説明責任が果たされたとは国民は見ていない。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側と政治家との関係なども、解明にはほど遠い状況だ。
 首相は、これらに対する国民の声を受け止めて今後に生かし、信頼回復に向けた取り組みを進めると述べた。また、悪質商法や悪質な寄付による被害者の救済へ関係法令の見直しなどを打ち出した。重要であり、実効性のある対策を求めたい。
 一方で、教団側と政治の関係には言及しなかった。自民党内の融和優先の思惑が透ける。政治や行政がゆがめられていないか、関係は断ち切れるのかなどに国民の強い関心が向けられる。実態の把握は是正の基本となるはずだ。解明を素通りするような態度が、首相が掲げる政治姿勢と一致するとは思えない。
 経済対策は、重点分野に「物価高・円安への対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」を位置付けた。これまで「成長と分配の好循環」を掲げ、成長も分配も実現すると訴えてきたが、そうした文言は入っていない。物価高騰など直面する課題への対応は急務とはいえ、従来の政策の方向性を変えたのか気になる。
 物価高に関し、月内に総合経済対策を取りまとめて、国民生活と事業活動を守り抜く決意を表明した。急激な値上がりが想定される電気料金の負担軽減へ「前例のない思い切った対策を講じる」と訴えた。強い言葉をどう実現するのか試される。
 新型コロナウイルス対策は、インフルエンザとの同時流行を想定した保健医療体制の確保などを進めるとした。社会経済活動との両立が模索されるようになり、十分な説明がこれまで以上に大切になる。
 外交・安全保障では、防衛力の5年以内の抜本強化を図ると主張した。「反撃能力(敵基地攻撃能力)」を含め、あらゆる選択肢を排除しない姿勢を表明した。年末までに予定する安保関連3文書の改定と併せ、重要な論点となる。
 防衛費の事実上の目安だった国内総生産(GDP)1%枠の形骸化が指摘される。軍拡競争や財政圧迫の懸念も強まる。長期的な視点からの冷静な議論が必要だ。

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