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2022.09.22 08:00

【国連総会】信頼向上へ機能強化を

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 食料危機や物価高騰、気候変動など地球規模の課題への対処が求められている。国連の信頼性を高めるための機能強化が欠かせない。
 国連総会は、加盟国の元首らが演説する一般討論に入った。ロシアのウクライナ侵攻で揺れる国際秩序の再構築が迫られている。
 グテレス事務総長は、国家間の分断により世界が「とてつもない機能不全に陥っている」との認識を示した。また、侵攻に伴う欧米とロシアの対立を念頭に「国連安全保障理事会の機能が弱体化している」と指摘している。
 安保理改革の必要性を訴える意見は根強い。国際平和を担う安保理だが、存在感を発揮できない局面が続いているためだ。
 ウクライナ侵攻に関連する決議は、常任理事国であるロシアが拒否権を行使して採択できていない。常任理事国が当事者となると、身動きがとれなくなる欠陥が露呈する。
 そもそもロシアは、安保理の緊急会合中に侵攻を強行した。自らが安保理を否定するかのような行動をとっていては、改革を求める意見が強まるのは当然だ。
 岸田文雄首相は、安保理改革の決議案作成へ交渉開始を呼び掛けた。国連の信頼性が揺らぐ中、機能回復を図るために積極的な対応が求められている。賛同国とともに粘り強い取り組みが求められる。
 侵攻を巡り、国連総会は人権理事会からロシアを追放する決議を4月に採択している。ただ、先に採択した人道状況の改善を訴える決議などより賛成は減ってしまった。
 ロシアからの圧力を受け、棄権や反対に回った国があったためだ。各国の思惑が絡み、一致した対応を打ち出しにくい実情がある。そもそも、安保理の常任理事国は強大な権益を手放したがらず、改革に乗り気ではない。それらを乗り越えるのはよほどの熱意がないと難しい。
 常任理事国が拒否権を乱用するのを防ぐため、行使した際には総会会合でその理由を説明する制度を取り入れた。説明責任を伴わせることは透明性につながる。小さな改革ではあっても、たゆまぬ努力で実効性を高めていくことが重要だ。
 国際社会は課題が山積する。侵攻に伴うエネルギーなどの高騰が亀裂を深める。食料危機はロシアによる黒海封鎖が主因との指摘に、ロシアは経済制裁の影響と主張し対立した。国連はトルコと仲介して穀物輸出の再開につなげた。その安定とともに、関係国と連携しながら停戦への働き掛けを強めたい。
 首相は演説で、ロシアの核兵器による威嚇を非難し、核兵器のない世界の実現へ現実的な取り組みを進めると主張した。来年5月に広島で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)をにらみ、国際社会に核軍縮への取り組み強化を訴えた。
 核拡散防止条約(NPT)再検討会議は最終文書を採択できず、形骸化が進む。日本が核保有国と非保有国の橋渡し役となるには、首相の力強い行動が不可欠だ。

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