2022.09.09 08:38
「ほおっちょけん」学ぼう 高知市社協が学校などで福祉教育 、三里中は高齢者ごみ出し支援
買い物に困っている人を見たらどうする? 寸劇で考える子どもたち(高知市土佐山桑尾の土佐山学舎)
「『放っちょけん』って、どんな意味か知っていますか? 困っている人がいたら独りぼっちにしない、という意味です」
8月下旬。土佐山学舎(同市土佐山桑尾)の放課後子ども教室で、市社協職員や地域の民生委員らによる学習会が行われた。
「土佐山学舎の小学生は何人?」「では、65歳以上の高齢者は何人くらいと思う?」
地元の高齢者を「15人」「35人」と口々に予想した子どもたちは、児童数96人に対し高齢者が365人と聞いて驚きの声を上げていた。
児童は続けて、目や耳の機能が低下した高齢者の不自由さを疑似体験。学習会名にもなっている市社協の犬のキャラクター「ほおっちょけん」が登場したり、買い物に困っている人の手助けを考える寸劇などを見て「お年寄りに優しくしたい」「困っている人がいたら助けようと思った」と話していた。
同市社協は2016年度に保育園、幼稚園でこうした学習会をスタート。小中高校や企業などにも対象を広げ、19年度は19カ所(延べ854人参加)で行った。開催地の地元の民生委員らがサポーターとして関わっており、市内11地区の76人がサポーター登録している。
20年度以降は新型コロナウイルス禍の影響で活動を縮小していたが、本年度は10カ所程度で実施予定。同市社協地域協働課の馬場敦久さんは「開催場所やサポーターを増やし、福祉教育を充実させたい。小さい時から地域の大人と関わり、地域を大切に思う気持ちも育てたい」と話す。
ごみ出し支援のボランティアをする三里中生(高知市十津3丁目)
学習会から一歩進んで、実際に中学生が地域の困りごとを支える活動も始まっている。
8月下旬、同市の十津地区。午前7時すぎに、地元の三里中の生徒会メンバー9人が集まった。腕には「三里をほおっちょけん!」と書かれた腕章。この日は粗大ごみの収集日で、生徒は足腰の弱った高齢者宅などを訪れては不要になったたんす、テレビ台、瓶・缶類などを手分けして運び、分類した。
こうしたごみ出し支援ボランティアは、市社協から「ごみが出せない高齢者がいる」と聞いた生徒会が企画。昨年1月に始め、今回が3回目だった。
鉄製の農機具などを運んでもらった独居の高齢女性は「ずっと前から処分したかったけど足が悪うて。1人じゃ運べんで困っちょった」。生徒に「ほんまに助かる。ありがとうね」と頭を下げた。資源ごみが入った袋に「三里中の生徒さんへ どうもありがとう」とのメッセージを貼り付けた人もいた。
同地区の生活支援ボランティア、西岡賢治さん(75)が「生徒が関わってくれることで地域が元気をもらいゆう。これを三里の日常の風景にしていきたい」と喜ぶ横で、同中3年の土居尚倫さん(14)は「自分たちのまちで、困ってる人の力になれるのがうれしい。継続してやっていきたい」と額の汗をぬぐった。
「ほおっちょけん」の輪が少しずつ広がっている。(松田さやか、早崎康之)