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2022.09.01 08:00

【地震の臨時情報】改めて備えの確認を

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 例えば今この瞬間、東海沖で大きめの地震があり、気象庁が巨大地震の「臨時情報」を発表したとする。私たちは、慌てずに受け止めることができるだろうか。
 南海トラフ巨大地震の起こる可能性が高まった場合に気象庁が発表する臨時情報について、沿岸地域の住民の理解が進んでいないことが、共同通信の調査で分かった。
 津波被害が想定される全国139市町村の7割以上が「住民の理解が進んでいない」と回答。本県の対象19市町村も、「進んでいる」としたのは1町のみで、残りは「進んでいない」「分からない」だった。
 臨時情報は、住民に警戒や事前避難を求めるが、趣旨が浸透していないままでは混乱を招きかねない。調査では、市町村の6割強が、周知に関する国の取り組みを「不十分」とした。国も含めて、周知促進へ踏み込んだ姿勢が求められる。
 南海トラフ地震は震源域の東側、西側で時間を置いて連続発生することがある。臨時情報の発表はこうしたケースを想定し、2019年から運用を始めた。
 想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震などが起こると発表を検討し、リスクに応じて「警戒」「注意」を発表する。リスクの高い「警戒」の時は沿岸住民らに1週間の事前避難などを求め、「注意」では備えの再確認や高齢者らの自主避難を呼び掛ける。
 混乱は、リスクが低い「注意」の時の方が起こりやすいかもしれない。住民が危機感を持ちにくい中で警戒を促すことになるためだ。学校を休校にする場合などは保護者が反発する可能性もあり、事前に周知しておくことがより重要になる。
 臨時情報の発表自体がパニックを招く恐れもあろう。情報のリスクは時々で異なるだろうが、どういう形にせよ、いつもより地震が起きやすくなっているという現実を突きつけられることに変わりない。食料の買い占めなどを懸念する声もある。
 1月に日向灘で起きた地震はM6・6で、臨時情報を検討する条件にもう少しで該当した。臨時情報は決して非現実的な話ではない。行政も住民も、発表された時をシミュレーションし、心の準備をしておくことが重要だ。
 周知不足の一因には新型コロナウイルス禍で、啓発活動が十分にできないことがあるようだ。
 ただ、臨時情報が出た場合の具体的な対応は市町村に委ねられており、十分練られていないため説明が進まない側面もある。国や県は、一律的な行動基準をつくる必要性を検討してもよいのではないか。
 注意しないといけないのが、臨時情報は地震が段階的に起きる場合の措置であって、最大クラスの地震がいきなり来るケースも当然ある。臨時情報を理解することは地震対応の一つに過ぎず、やはり幅広い視点で備えていくことが欠かせない。
 きょう9月1日は「防災の日」。台風や豪雨も含めて、改めて災害への備えを確認したい。

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