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2022.08.21 08:00

【韓国大統領発言】関係改善へ環境づくりを

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 戦後最悪とされる日本と韓国の関係を改善し、経済社会活動や安全保障の強化につなげることが求められる。懸案の解決は簡単ではないが、進展へ向けた動きを本格化させるには対話の環境づくりが基本だ。
 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は「光復節」の演説で、日本を「世界市民の自由を脅かす挑戦に立ち向かい、共に力を合わせて進むべき隣人」と位置付けた。就任100日での会見でも、「日本との関係を速やかに回復させ、発展させている」と、改めて関係改善に強い意欲を表明している。
 懸案である元徴用工訴訟について、敗訴した日本企業の資産売却に配慮する姿勢を示した。勝訴した原告が補償を受けられる方策を検討中とし、日本が憂慮する主権問題の衝突を回避する意向だ。
 元徴用工訴訟は2018年、韓国最高裁判決で日本企業への賠償命令が確定した。原告側が企業資産を差し押さえ、売却して現金化する手続きが最終段階に近づいている。
 日本政府は日韓請求権協定で解決済みとする立場を維持する。現金化されれば制裁措置を辞さない構えで、深刻な状況を招くと警告する。日韓関係の一段の悪化は必至だ。
 尹政権は7月に、現金化を避けるための解決策を探る官民協議会を発足させた。謝罪を前提にした肩代わり案など資産売却に代わる解決策が模索されているようだ。
 強制執行に向けた手続きは、早ければ秋に完了するとみられる。このため協議会は近く意見をまとめるとの見方がある。ただ、原告側には先延ばしを模索する韓国政府の姿勢に反発もあり、円満な解決策をまとめられるかは判然としない。
 日韓関係を冷却化したままで放置はできない。尹氏は歴史問題の解決へ日本側の協力を望む考えをにじませた。しかし、日本政府には韓国側への警戒感は根強い。元慰安婦問題を巡る15年の日韓合意を韓国側にほごにされた経緯もある。
 7月に来日した朴振(パクチン)外相は岸田文雄首相と会談し、徴用工問題で望ましい解決策を出せるよう努力することを表明した。関係改善への前向きな姿勢は評価できるが、事態を打開するのは簡単ではない。
 尹政権は身びいきな人事や与党の内紛などで、支持率は3割を割り込む一方、不支持率は6割を超える。国民の理解を得ないまま妥協案をまとめれば強い反発は必至で、政権運営にも大きく響きかねないだけに対応は見通せない。
 歴史問題の溝を埋める難しさはこれまでの経緯が示す。しかし日韓関係が行き詰まっていては、複雑化する情勢への対応が難しくなる。北朝鮮は尹政権への対決姿勢を強めている。米韓の合同軍事演習に対し、北朝鮮は対抗して黄海に巡航ミサイルを発射してけん制している。
 北朝鮮の核・ミサイル開発や覇権主義的な動きを強める中国と向き合っていくには、日米韓が連携して取り組まなければならない。そのためには日韓の関係改善が不可欠で、対話を重ねる必要がある。

高知のニュース 社説

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