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2022.08.12 08:00

【食料自給率38%】輸入頼みは心もとない

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 食品の値上げが相次ぐ中、食料の安定供給に向けた取り組みの重要性が増している。輸入の安定化とともに、国内農業の生産基盤を強化した経営の底上げが欠かせない。
 2021年度のカロリーベースの食料自給率は38%となった。過去最低水準だった前年度より1ポイント上昇した。新型コロナウイルスの感染拡大で低迷していた外食需要が回復傾向となり、コメの需要が持ち直した。また、小麦や大豆の作付面積や収量が増加した。
 とはいえ、低い状況が続いていることに変わりはない。自給率は、コメの消費減少や畜産物などを好む食生活の変化を受けて低下傾向が続いてきた。2000年代には40%となり、この10年ほどはそれを下回る水準で推移している。
 農業政策の基本計画では、30年度の自給率目標を45%とする。危機管理の面から高く設定したいのだろうが、よほど効率的な施策を講じなければ実現が難しいことは、達成を先送りしてきた経緯が示す通りだ。
 生産額から見た自給率は63%とカロリーベースを上回るが、前年度より4ポイント低く、最低を更新した。国際的な穀物価格の高騰などで、家畜のえさとなる飼料輸入額の増加が響いた。また、国産のコメや野菜の単価が下落して数値を引き下げた。
 こちらも30年度に75%とする目標を掲げている。だが、ロシアによるウクライナ侵攻などで輸入飼料価格はさらに上昇しているため、22年度には一段の落ち込みが想定される。国産飼料の増産など、課題としっかり向き合わなければ期待する姿は遠のいてしまう。
 日本の主要農産物の輸入は、少数の特定の国に依存する割合が高い。ことしの農業白書は、ロシアの侵攻などを受けて、輸入の安定化や多角化はもちろん、国内生産の増加を図る必要性を指摘した。食料供給のリスク軽減は急務で、そのための具体策を重ねていく必要がある。
 気候変動による生産への影響も見過ごせない。気温の上昇で、全国の幅広い農作物に品質低下や収穫量減少が見られる。集中豪雨による甚大な被害も起きている。高温に適応した品質への改良など、地域の実情に応じた対策の充実が不可欠だ。
 農家や法人などの農業経営体は、22年度に初めて100万を下回った。高齢化を背景に個人の離農が進み、この15年余りで半分にまで落ち込んだ。法人などは増えているが、若者の新規就農はうまく進まず、農家の減少に歯止めがかからない。経営体質の強化と担い手育成を急がなければならない。
 農林水産物・食品の輸出額は順調に伸びている。米国向けなどが好調で22年上半期は過去最高だった。新型コロナ禍で落ち込んでいた外食需要が回復し、円安も寄与した。
 政府は輸出拡大を唱え、販路開拓を支援する方針を示す。多様な対策を通して国内生産の活力につなげる必要がある。取り組みの相乗効果を高め、自給率の向上と安定供給を確かなものにしたい。

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