2024年 04月27日(土)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2022.07.31 08:00

【防衛白書】増額ありきでは危うい

SHARE

 中国とロシアの軍事動向は懸念を持って注視する。北朝鮮の核・ミサイル開発も警戒を要する。対処が迫られるが、そのためには防衛費の増額が必要だと主張しても、規模拡大ありきでは理解は得られないだろう。十分な説明が基本となる。
 2022年版防衛白書は、中国とロシアによる軍事提携の動きに警戒感を強めている。ロシアによるウクライナ侵攻や台湾情勢が、日本の安全保障環境への意識を高めていることは間違いない。
 中国は国防費を増加させ、軍事活動の拡大を図っている。台湾を巡る記述は昨年から倍増し、台湾への軍事的圧力とみられる行動を一層強めていると分析した。台湾情勢は日本の安全保障と国際社会の安定に関わると指摘する。さらに日本の一貫した立場は平和的解決だと言及し、動向を注視する考えを示した。
 ロシアの侵攻は特集を設け、経緯や見通しを解説する。ロシアの軍事行動を国際法や国際秩序と相いれないと非難し、国連安全保障理事会常任理事国として「前代未聞」と位置付けた。北方領土などでの活動活発化にも懸念を打ち出した。
 中ロは日本周辺で艦艇や爆撃機による共同行動を繰り返している。さらに軍事的な連携を深める可能性があると指摘した。緊張を高めないために外交努力が求められる。
 こうした動きに対処するために、白書は防衛力の抜本強化への意欲をにじませる。政府の経済財政運営の指針「骨太方針」は、防衛力を5年以内に抜本的に強化すると明記している。白書は岸田文雄首相があらゆる選択肢を排除しないと発言したことに触れながら、敵基地攻撃能力を改称して政府が保有を検討する「反撃能力」に言及している。
 そのためにもくろむのは23年度予算の大幅増額だ。北大西洋条約機構(NATO)の国防支出目標にも触れながら、日本は先進7カ国(G7)などと比べて最も低く、国民1人当たりの防衛費でも韓国、英国などより少額だと紹介する。
 ただ、国防支出の統一した定義がないこともあり、その多寡を正確に比較するのは困難とする見方も白書は示している。ならば金額の多寡を比べるよりも、目指すべき防衛の在り方を検討し、そこから積み上げた結果こそ重視すべきだろう。
 専守防衛との兼ね合いも無視できない。それらの説明がなければ国民の理解は深まりはしない。言うまでもなく財政支出には制約があり、財源の裏付けがなければならない。
 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画を巡る混乱は記憶に新しい。報告書データの誤りなどから断念に追い込まれた。思いつきのような対応をしては反発を強めかねず、軍拡競争に陥らないように警戒する必要がある。
 安全保障への意識が高まっているが、前のめりの姿勢では危うい。政府は防衛予算の編成には事実上上限を設けない姿勢のようだ。防衛費の大幅増額には賛否が分かれる。国会で議論を深めていくことだ。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月