2022.08.27 08:35
「花ではサクラが一番好き」シン・マキノ伝【9】=第1部完結 田中純子(牧野記念庭園学芸員)
前回、牧野が上京した際に博物局を訪ねたことを書いたが、初めて東京に来て博物局の中心的人物である田中芳男に会うことができたのはなぜであろうか。紹介がなくても面会は容易であったのであろうか。これに関連する出来事として、牧野が見学した第2回内国勧業博覧会に郷里佐川からワカキノサクラが出品されたことが挙げられる。出品者は堀見熙助(てるすけ)=1858~1923年。先に登場した堀見克礼の従兄弟(いとこ)である。熙助は、博覧会開催の前年明治13年に高岡郡勧業周旋係に任命され、翌年この博覧会のために上京した。そしてワカキノサクラは園芸部門において、一緒に出品したイッサイトウ(一歳桃)とともに褒状を授与された。ワカキノサクラの出品には牧野も携わっていて、堀見が伝手(つて)を頼って田中との面会が実現するように取り次いだと想像するが、確証はない。
ワカキノサクラ 『牧野植物学全集3 植物集説上』口絵より