2022.07.15 08:37
四国のカモシカ表情豊か 高知市の元飼育員中西さん撮影32年 集大成の写真集出版
「生態調査は動物園での飼育にも役立った」と話す中西安男さん(高知新聞社)
中西さんは同市の「わんぱーくこうち」の元飼育員。特別天然記念物のカモシカと出合ったのは34歳の頃だ。
安芸郡馬路村の山中。20メートルの「至近距離」でカモシカと目が合った瞬間、頭を殴られたような衝撃を受けたという。「氷河期から姿を変えていない動物。太古からつながれた命のオーラがあった」。以降、休みになるとせっせと山に通い、生態調査を行うようになった。
記録で残す必要があると撮影開始。そのうち写真の魅力に取りつかれ、53歳で早期退職して写真家に転身した。「カモシカに人生を変えさせられた」と笑う。
写真集の表紙には、逆光でカモシカの体毛が真っ白に輝き、体のシルエットが浮き上がるカットを使った。20年以上、頭に描き続けた絵コンテを形にした執念の作品だ。
1メートルの距離から撮影した生後数カ月の子ども「アイ」。最も思い入れのある一頭だ(写真集「カモシカの季節」より)
中西さんは「行動は単調な動物を、32年も飽きずに追っ掛けてきたのは自分でも不思議。でも言い表しようのない魅力がある。それが伝わればうれしい」。
この10年、撮影が非常に困難になった。中西さんが撮影のフィールドとしてきた剣山周辺でニホンジカが爆発的に増加。餌となる草木が減少し、生息数が激減しているのだ。
「今年1月から、近くでほとんど見ていない。仕事にならない」とため息をつくが、撮影をやめるつもりはない。
「新たなフィールドも見つけ、四国のカモシカがどうなっていくか見届けないと。何よりカモシカと出合うと心臓がドキドキする。だからまだ撮るつもり。しつこいね」と笑った。
リーブル出版発行で87ページ、2千円(税別)。金高堂書店や宮脇書店で販売している。(石丸静香)