2022.07.08 05:00
【2022参院選 政治とカネ】市民感覚とどう向き合う
近年では、参院選広島選挙区での買収や鶏卵汚職、新型コロナウイルス関連融資の違法仲介などが相次いで発覚し、閣僚経験者や国会議員が立件された。有罪判決や議員辞職にもつながっている。
政治の信頼に関わる問題だ。行政がゆがめられていないか検証を重ねていく必要がある。そして再発防止への取り組みが求められる。
だが、そうした動きは鈍い。「説明責任」が繰り返し語られながら、果たされたとは言い難い。
安倍晋三元首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会の費用補塡(ほてん)問題は、新たに酒類の無償提供を受けていたことが表面化している。この問題では、ホテル側の明細書を開示すれば事実関係が分かると思われるが実現していない。疑念がくすぶり続ける一因であり、解明への協力姿勢が不可欠だ。
国会での118回の「虚偽答弁」を安倍氏は謝罪しているとはいえ、国会軽視が残したものは重い。そうした風潮は今もどこかに潜んでいないか注意する必要がある。その場限りのような対応を排除して、真剣な討議を積み重ねることで言論の府の再生につなげていくことが大切だ。
「負の遺産」とされる森友、加計学園問題も曖昧にはできない。説明責任をどう果たすのか、岸田政権の向き合い方が注視される。
一方、国会議員の厚遇ぶりにも批判は根強い。
歳費とは別に月額100万円が支給される「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費)の在り方が問われてきた。在職1日でも満額支給される仕組みが問題提起され、日割り支給は4月に是正された。
しかし、焦点は使途公開と未使用分の国庫返納だ。先の国会会期内に結論を出す方針は確認していたが、実現しなかった。自民党内に使途公開に否定的な声が根強く、野党から批判が上がるが、野党内にも慎重な意見があるという。
消極論の背景は、使途が事実上自由なことだ。事務所費や秘書給与などのほか、子どもの教育費に充てているという証言もあるという。政治活動との線引きが明確ではないのが実態のようだ。
ならばなおさら、透明性の確保が求められるはずだ。地方議会の多くで、同様の政務活動費の使途を公開している。当たり前の取り組みであり、国会にも使途の公開を望む世論は相当に大きい。
この春には周辺相場より安い議員宿舎の家賃がさらに引き下げられた。物価高で国民生活が圧迫される中、国会議員が自らに甘い姿勢でいるようでは政策論議をしても説得力を欠いてしまいかねない。
市民感覚とかけ離れると政治の信頼は遠のいてしまう。課題との向き合い方が試される。