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2022.07.07 11:38

「0・3票」は放置か、神奈川・宮城・東京 いつになったら「1人1票」(続編)

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 議員の改選を待つ国会議事堂右側の参院=5月23日、東京・永田町

 今回の参院選公示に合わせ、総務省が発表した6月21日現在の選挙人名簿登録者(有権者)は、海外に住んでいる人も含めて1億543万5553人で、前回2019年参院選の公示日前日よりも約105万人減っている。共同通信社が選挙区間の「1票の格差」を試算したところ、最大格差は3・03倍となり、前回参院選の公示日前日の最大格差2・99倍を上回った。



 有権者は男性5096万8299人(48・3%)、女性5446万7254人(51・7%)。市や区に住む有権者は9651万7438人(91・5%)で、町村部は891万8115人(8・5%)となっている。



 有権者が多い選挙区は、(1)東京(改選、非改選の合計定数12、以下同じ)1152万2220人、(2)神奈川(定数8)772万7419人、(3)大阪(同)732万9816人の順で、福井(定数2)の63万7068人が最も少ない。



 議員1人当たりの有権者は、神奈川の96万5927人が31万8534人の福井の3・03倍に上り、宮城(定数2)の96万3670人と東京の96万185人も福井の3倍を超えている。福井の有権者が1人1票とすると、神奈川、宮城、東京各選挙区の有権者は1人0・3票の投票価値しかない。



 都道府県を単位とする参院選選挙区(旧地方区)の1票の格差は、1947年の第1回選挙では最大2・62倍だったが、農村部から都市部への大きな人口移動に伴って、拡大し続ける。



 司法修習生(後に弁護士)の越山康さん(故人)が憲法14条の「法の下の平等」に反するなどとして提訴した1962年以降、最大格差は4倍台から5倍台で推移。6・59倍となった92年の参院選は、最高裁が判決で「違憲状態」と初めて認定し、8増8減の定数是正で5倍前後に縮小した。



 これに対し、最高裁は都道府県単位の選挙制度の見直しを求めたが、国会は定数是正でしか対応しないことなどから、5・00倍の2010年の選挙を再び「違憲状態」と認定。それでも国会は、都道府県単位の選挙区にこだわり、定数の4増4減で13年の選挙は格差を4・77倍に縮めたものの、最高裁は三たび「違憲状態」と宣言した。



 国会はやむなく徳島、高知両県と鳥取、島根両県の合区を含む10増10減の定数是正などに踏み切り、16年と19年の参院選は最大格差が3・08倍と3・00倍(公示日前日より0・1ポイント拡大)となり、最高裁はどちらも「合憲」と判断している。



 19年の選挙で議員1人当たりの有権者数は宮城選挙区が福井選挙区の3・00倍で、当選者が獲得した票は、福井選挙区が約19万5千票なのに対し、宮城選挙区は約47万4千票を要した。



 今回の選挙は、最大格差が3倍をわずかに上回るだけなので、最高裁は「合憲」とする可能性が大きい。しかし、最高裁が国会に求めた選挙制度の見直しとは、二つの合区などで是とするものだったのか、投票価値が1人0・3票しかない多くの有権者を放置したままで「憲法の番人」と言えるのだろうか。(共同通信編集委員兼論説委員=竹田昌弘、有権者数は総務省による7月4日の訂正発表に基づく)

(c)KYODONEWS

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