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2022.07.01 11:00

【高橋弘の巨樹巡礼 15回続きの3】 青森県十和田市のブナ 計り知れない強運持つ

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 「森の神」と呼ばれるブナ=2007年10月、青森県十和田市

 幹周5メートル以上の木を「巨樹」と呼ぶ。巨樹になる樹種の多様さが世界有数の日本には、数多くの巨樹が存在し、人々の心のよりどころになってきた。巨樹写真家の高橋弘さんが、全国の会いに行ける巨樹を紹介する。


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 2007年、新たに確認されたブナの巨樹が「森の神」(青森県十和田市)だ。青森のブナといえば、真っ先に白神山地を思い浮かべる方が多いだろうが、意外にも奥入瀬渓流に近い山林に生育する木なのである。


 森の神は幹が真っすぐに伸び、樹高があり、実に優美。あまりのスマートさゆえ、遠目にはそれほどの巨樹には見えないのだが、実測してみると、その直感は見事に裏切られてしまう。


 樹齢は推定400年。幹の周りは6メートルを超え、ブナとしては日本最大クラス。訪問時はちょうど紅葉の真っ最中で、朝日を浴びて立つ姿は果てもなく神々しく、まさに森の神と呼ばれるにふさわしいと感じた。


 不思議なことに、周囲に他のブナはなく、ほとんど伐採し尽くされているようだったが、森の神だけはなぜか生き残っていた。地元のきこりたちの間では、三つに分かれた木には神が宿るという考えがあり、伐採から免れたのだという。


 三種の神器、三位一体、天地人の三才…。古今東西、「三」という数は神聖なものとされてきた。偶然が重なり、現在まで生き抜いてきた森の神。このブナの持つ強運は計り知れないものがある。


 これだけの大きな体を持ちながら、空洞や大枝が折れた痕跡が見られず、ほぼ健全に近いきれいな姿で立っていたのは奇跡に近い。現地に保護の囲いはあるものの、近年、熊が木にひっかき傷を残していったそうだ。熊のテリトリー内にあることは間違いない。


 【データ】幹周6・01メートル、樹高29メートル。(筆者実測値)


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 たかはし・ひろし 1960年山形県生まれ。88年より巨樹の撮影を始め、これまでに日本全国3千本以上を収めた。東京都奥多摩町の日原(にっぱら)森林館で解説員を務め、環境省の「巨樹・巨木林データベース」の管理も行う。近著に「千年の命 巨樹・巨木を巡る」など。

(c)KYODONEWS

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