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2022.06.22 08:35

【2022参院選 高知/徳島】ひとり親コロナで貧困化 食に苦労「消しゴムも買えず」 子ども食堂、生活支援―声よ届け

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食料支援を行う子ども食堂。ひとり親家庭などの生活を支えている(高知市中万々)

食料支援を行う子ども食堂。ひとり親家庭などの生活を支えている(高知市中万々)

 新型コロナウイルス禍は、もともと社会で弱い立場にあった人たちの貧困を深刻化させた。県内のあるひとり親世帯もたちまち生活苦に陥り、途方に暮れた。参院選はきょう公示。セーフティーネット(安全網)は機能しているか。政治は寄り添えているか。

 高知市在住のA子さん(40代)は数年前に夫と離婚。パートの仕事を続けながら、小学生から20代まで4人の子どもと暮らす。

 介護業界で働くが、コロナ下の利用控えで仕事が一時期、激減。収入が10万円を切る月もあり、もともと苦しかった家計はさらに逼迫(ひっぱく)した。冷蔵庫の食べ物を巡りきょうだいげんかが起き、「子どもの消しゴムが割れても買ってあげられなかった」と言う。

 困り果てて昨秋、市の広報紙に載っていた相談窓口を訪ねた。ひとり親の自立支援を目的とした家賃貸付制度を利用できることになり、その償還免除要件として、新しいパート仕事の掛け持ちも始めた。

 午前4時に起きて朝食や弁当を作り、夕方まで一つ目の仕事へ。帰宅して子どもたちに晩ご飯を用意し、午後10時ごろまで別の職場で働く。家族分の洗濯や掃除、翌朝の準備をしてやっと就寝。「朝からフル回転です。睡眠時間は5時間あったらいい方」

 支援者の紹介で、昨年末から「こども食堂こうち実行委員会」が同市中万々で行っている食料支援も利用し始めた。県内の市場や企業などから寄付された野菜、果物、米、パンなどを週2回受け取りに行く。食費が約半分に減り、得意な料理の腕を生かしてたくさんのおかずが食卓に並ぶようになった。

 「これまで『ほかに食べ物ない?』って子どもに言われるのがつらかった。今はみんなが『あー、おなかいっぱい』って言ってくれる。最近うれしかったのが、上の子に5足398円の靴下を買ってあげられたこと。それぐらい生活が変わりました」

 ◆ 

 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、ひとり親世帯の「貧困率」(中間的な所得の半分である127万円に満たない家庭で暮らす人の割合)は、2018年時点で48・1%。コロナ禍による雇用悪化は、とりわけ非正規雇用が多い女性労働者に打撃を与え、シングルマザーの生活苦にも拍車をかけた。

 県が昨年8月に行った調査では、母子世帯の約3割がコロナで世帯収入が減ったと回答。家計が苦しいと回答した母子世帯は72%に上っている。

 「こども食堂―」でも、この2年余りで支援依頼が増え、現在食料支援を行う52世帯のうち母子が28世帯を占める。配偶者がいてもDV、コロナによる失職、病気などさまざまな事情を抱える女性から相談があり、「子どもは国の宝。育てゆうお母さんたちがこんな状況に置かれていいが?」と代表の秦泉寺あやさん(68)は嘆く。

 活動を支えるボランティアたちもほとんどが女性。「いらっしゃい」「これも持っていきや」と食材を取りに来た母親たちに声を掛け、必要な場合は役場窓口や福祉事務所につないでいる。

 コロナの影響が長期化する中、国も困窮するひとり親世帯への給付金を設けてきたが、家計の穴埋めに使うと「一瞬でなくなった」とA子さん。長い議論の末に時々もらえる一時的な支援より、定期的な食料支援によって毎日の生活が回っている。食堂関係者も「(困窮世帯の)状況は全く良くなっていない。お母さんたちの言葉が政治に届いてほしい」と切実な思いをにじませる。

 A子さんは子どもたちに「いろんな人に助けられゆうがで。ニンジン1本も無駄にしたらいかん」と伝えている。「普通に学校(高校)にも行かせてあげたくて。今後は学費の貯金もできるように生活を成り立たせたい」。そう前を向く。(松田さやか)

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