2022.06.11 08:50
高知の新酒は金賞率1位 2022年全国鑑評会で12点中8点
今年の新酒鑑評会の出品酒が並んだ製造技術研究会(広島県東広島市)=高知県工業技術センター提供
110回目の今年の鑑評会には、2021年7月以降に造られた新酒826点が全国から出品された。約20人の審査員が、銘柄などを伏せて利き酒で味や香りを評価。4月の予審で405点の入賞が決まり、このうち特に優秀な205点が5月の決審で金賞に選ばれた。
金賞率が50%を超したのは本県のみ。全国1位は00年以来、22年ぶり2回目で、入賞率1位は初の快挙となった。金賞率2位は鳥取の50・0%(4点中2点)、3位は秋田の48・1%(27点中13点)、4位福島37・8%(45点中17点)、5位島根37・5%(16点中6点)と続いた。
鑑評会では近年、常連県が上位を固めつつある。県酒造組合がまとめている、過去10年間での通算成績でみると、本県の金賞率は計136点中65点の47・8%で、全国3位に入っている。
1位は宮城の58・7%(223点中131点)、2位は福島の50・9%(405点中206点)、4位は秋田の45・9%(303点中139点)と、東北の酒どころが上位を占める中、西日本では出品数も金賞率も高い本県の存在感が際立っている。
背景にあるのは、他県から「高知方式」と呼ばれ参考にもされている、各蔵元の連携と県工技センターの技術支援だ。
センターの酒類担当者は酒造りシーズンに入ると毎週、県内18蔵を巡回。もろみや麹(こうじ)、原料米を持ち帰って成分を分析し、結果は一覧にして全蔵元にフィードバックしている。
こうした情報共有が全体のレベルアップにつながっているというのが蔵元側の一致した見方。組合の竹村昭彦理事長(司牡丹社長)は「成功事例や失敗事例など多くのことを短期間に学べ、お互い切磋琢磨(せっさたくま)できる」と話す。
21年度から県も支援態勢を充実。酒類担当を2人から3人に増やした上、センターで酒造りを長年支えてきた上東治彦さん(62)を退職後に特別技術支援員として登用し、実質4人態勢で手厚くなった。
麹の働きを分析する頻度は隔週から毎週に変更し、原料米の分析内容も増やして支援を強化した。上東さんは「今年の出品酒の成分を調べると、より香りが高く、味のきれいな吟醸酒に仕上がっていた」と振り返る。
竹村理事長も「金賞率1位は技術力を客観的に示せる。地域の食と合わせ酒文化を発信すれば、県外、海外から高知に人を呼ぶ武器になる」と意気込む。今月、東京で開かれる全国日本酒フェアでも積極的なPRを計画している。(井上智仁)
金賞を受賞した県内の製造場と銘柄は次の通り。
浜川商店(美丈夫)、土佐鶴酒造北大野工場千寿蔵(土佐鶴)、同工場天平蔵(同)、南酒造場(南)、アリサワ(文佳人)、司牡丹酒造第一製造場(司牡丹)、同第二製造場(同)、西岡酒造店(純平)