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2022.06.06 08:00

【訪日客受け入れ】油断せず対策徹底を

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 政府は新型コロナウイルスの水際対策を緩和し、外国人の訪日観光客の受け入れを10日から再開する。今月から入国者数の1日当たり上限を1万人から2万人に引き上げており、その枠内で、添乗員付きのツアーに限って認める。
 訪日観光客の受け入れは2020年春に禁止して以来、約2年ぶりとなる。深刻な影響を受けている観光業の回復に期待がかかるが、感染再拡大の懸念も付きまとう。油断することなく対策を徹底し、着実ににぎわいを取り戻していきたい。
 日本は、世界的に厳しいと言える水準の水際対策をとってきた。昨年11月、オミクロン株の拡大で外国人の新規入国を一時停止。今春からビジネスや留学目的などに限り解禁したが、観光目的の入国は認めていなかった。
 それにより感染拡大防止も図られたとみられるが、日本に先んじて欧米やアジアの主要国の多くが観光客の入国を再開。国内観光業界からは「鎖国政策」との批判も出ていた。その意味では、受け入れ枠はまだわずかだが、大きな一歩と言える。だからこそ慎重に歩みを進めていく必要がある。
 受け入れに向けて環境整備も進んでいる。入国上限の拡大に合わせて検疫措置も緩和され、感染リスクの低い国・地域からの旅客は、検査などが免除されるようになった。業界や旅客からは歓迎の声が上がる。
 解禁に先立ち、課題や対策をガイドラインとしてまとめるため、国は実証ツアーも実施。米国やタイなど4カ国の旅行会社関係者らが15組に分かれて観光地を旅行した。この中には実際に感染者が出たツアーもあった。経過や対応をしっかり検証し、ガイドラインの実効性に生かさなければならない。
 日本経済で訪日観光が占めるウエートの大きさは言うまでもない。コロナ禍前の19年、訪日客は3188万人超を記録し、旅行消費額は4兆8千億円で過去最高となった。岸田文雄首相は「段階的に平時同様の受け入れを目指す」との考えを示している。
 追い風も吹く。現在の円安は海外の旅行希望者にとってメリットが大きい。また、先ごろ「世界経済フォーラム」が発表した21年版の旅行・観光開発ランキングで、日本は交通インフラや文化資源が評価されて初めてのトップとなった。 
 業界には問い合わせが増えているという。個人客への拡大など今後、受け入れ枠や要件の緩和を求める声は強まってくるだろう。だがやはり、経済活性化の視点だけが先立つことがあってはならない。
 国は近く、ツアーのガイドラインを発表する。作るだけでなく、ガイドラインが守られるよう周知徹底を図る必要がある。
 新しい変異株の発生情報などがあれば、速やかに分析し、状況に応じて入国条件を見直すといった対応も求められよう。感染拡大の恐れ、兆しなどを把握した時、機動的に対応できるかどうかが極めて重要だ。

高知のニュース 社説

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