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2022.05.26 08:00

【日米豪印会合】思惑の違いを乗り越えて

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 民主主義陣営の結束を強固にしたというより、枠組みの維持に腐心した側面が強いように見える。だが、そうであっても協力を続けながら関係を深めていくことが重要だ。
 日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会合は、インド太平洋地域のインフラ整備へ、今後5年間で6兆円以上の支援や投資を目指すことで合意した。軍事的、経済的な影響力を強める中国に対抗し、債務問題に直面する国への支援などに取り組む。
 クアッドは中国を念頭にした枠組みで、自由で開かれたインド太平洋地域の実現を目指す。4カ国は民主主義や法の支配という普遍的な価値観を基盤に連携を強化して、新型コロナウイルス感染症や気候変動など多岐にわたる協力をしていく。
 会合は目的に沿う成果をまとめてはいる。しかし一方で足並みをそろえる難しさを露呈してしまった。
 共同声明は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、全ての国家の主権と領土一体性の尊重を強調した。また中国を念頭に、ルールに基づく海洋秩序の順守を求め、威圧的、挑発的な行動に反対する姿勢を明確にした。しかし、ロシアと中国には直接は言及していない。
 インドはロシアの伝統的な友好国で、対ロ制裁に加わる日米豪と立場は異なる。インドが制裁の抜け道になることへの警戒感もある。先ごろは、ウクライナ支援物資を輸送する自衛隊機の受け入れを拒否した。
 また、中国とは国境紛争を抱える一方、貿易相手国でもあり、さらなる関係悪化は望んではいない。単純化できない構図だ。
 ほかの3カ国を見ても、オーストラリアは新政権に移行した。対中強硬路線を含めた外交・安保の基本方針は継承する姿勢とはいえ、対中政策の変更も想定される。
 日本も中国の海洋進出に警戒を強めているが、経済のつながりが強く独自の立ち位置をとらざるを得ない。台湾海峡を巡り、バイデン米大統領は防衛に関与する姿勢を打ち出した。日本は両岸問題の平和的解決を促し、中国を強く刺激するのは避けたいのが本音だ。
 経済枠組みを見ても地域に複数ある。環太平洋連携協定(TPP)とは距離を置く米国は、クアッド4カ国も参加する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」発足を主導した。中国はTPPへの加盟申請で揺さぶりをかけている。IPEFで地域への影響力回復を狙う米国に中国は反発を強め、対立は複雑化する様相を見せている。
 岸田文雄首相は「同志国間でも立場が完全に一致しないこともある」と、クアッドの結束の弱さを認める発言をしている。違いがあるならばなおさら、連携ができる部分から取り組み、信頼を高めていくことが重要となる。
 日米豪印ともそれぞれの思惑や立場がある。それを先鋭化させてはこの枠組みが揺らいでしまう。インド太平洋地域の緊張を高めないための外交力が試される。

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