2022.05.21 08:00
【マスクの脱着】警戒はまだ緩められない
専門家や政府が見解を示した。新型コロナは接触感染よりも飛沫(ひまつ)感染のリスクが高く、マスク着用で感染抑止の効果が期待できる。政府は、屋内にいる時や会話の際にはマスクの着用を徹底するように呼び掛けてきた。
一方で、屋外で周囲の人と十分な距離がとれれば必ずしも着用の必要はないとしてきた。しかし、そうした判断自体は広がったとは言えない。どのような状況なら外していいのか判然としなかったことで、着用を当然とするような風潮が生まれることにもつながっている。
専門家は、屋外で距離が十分に確保できる場合のマスクが不要となる例として、公園での散歩やランニング、自転車での移動などを挙げた。確かにこれまでも、人によって対応が分かれていたことではある。
さらに、屋外で周囲との距離が十分に確保できなくても、会話が少ない場合を挙げた。小学校などの屋外での体育授業や休憩時間中の運動遊びでも着用は不要とした。
ただ、屋外であっても人混みや会話をする場面では着用を求めた。大勢の人が利用する公共交通機関の利用時も引き続き必要とした。
また、一時的に推奨された2歳以上の未就学児のマスク着用は、一律には着用を求めない対応に転じた。負担は一定軽減されるだろう。
世界的に行動規制の緩和が進んでいる。第6波は重症化しにくいとされるオミクロン株が主体となったこともあり、日本でも対策の緩和を望む声が増えてきた。これから気温が上がり熱中症も増えそうだ。状況に応じた対応をとることも、施策の信頼に必要なことではある。
ただ、感染は落ち着いていない。新規感染者数は下がりきらず、全国的には昨夏よりも多い状況にある。高知でも高めで推移している。
このため専門家は、マスクを含めた基本的な感染対策の必要性を強調している。これをないがしろにして感染が再拡大しては病床の逼迫(ひっぱく)を招きかねない。
感染拡大の主要因は飲食店から学校や高齢者施設に移っていると分析され、政策転換を求める意見も出されている。次の流行へ備え、これまでの取り組みの効果を検証することが必要だ。それが不十分なまま、社会経済活動の再開へ向けた動きが加速することへの警戒感も根強い。
新型コロナ対策は政権の支持率に影響するだけに、参院選を控えて世論にらみの状況となる。新たな対策は歓迎と戸惑いが交錯する。国民意識の分断につながらないよう、丁寧な情報発信が求められる。
社会経済活動との兼ね合いを探りながら新型コロナと向き合っていくしかない。基本となるのは科学的知見に基づく対応だ。