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2022.05.06 08:00

【高齢運転者対策】生活支援とも向き合って

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 高齢ドライバー向けの新たな対策が今月13日に始まる。
 75歳以上による交通死亡事故の割合は高止まりしている。安全な運転ができているか確認することは悲惨な事故の抑止に役立つ。一方で運転免許を失効しかねず、生活環境を大きく変える可能性がある。多面的な支援もまた欠かせない。
 改正道交法は、一定の違反歴がある75歳以上を対象とした運転技能検査(実車試験)の導入を大きな柱の一つとする。また、先端技術を搭載した「安全運転サポート車(サポカー)」の限定免許制度も始まる。
 2021年の死亡事故全体のうち、75歳以上のドライバーが関係するものは15%に達した。この40年近くで最高の割合となった。アクセルやブレーキの踏み間違いなどの操作ミスが目立っている。
 信号無視や逆走など、実車試験の対象となる違反をした運転者が重大事故を起こした割合をみても、75歳以上は全体の2倍強に上る。安全性を確保し、事故を未然に防止する手だてが求められる。
 加齢による判断の遅れや身体機能の低下は避けがたい。ただ、自身ではそれを十分には受け止めず、技量を過信してしまいがちだ。第三者が客観的に判断することは認識を高めることにつながる。
 試験の対象者は、教習所などで実際に運転して検査を受ける。合格者はさらに記憶力や判断力をチェックする認知機能検査を受け、認知症の恐れがないと判定されると高齢者講習を受け更新する。
 受検は免許有効期限の6カ月前から繰り返しできるが、期限までに合格できないと免許を更新できない。対象者の2割ほどが不合格になるとする試算がある。
 採点の公平性が維持されなければならないのは当然だ。技能の平準化を進めてきたはずで、制度の信頼性の基本となる。
 高齢者にもリスク軽減を図る動きがみられる。免許の自主返納制度が始まって20年以上になり、21年は51万人を上回った。19年の東京・池袋での暴走死亡事故から増えているという。返納者のうち75歳未満が半数近くいるのは、安全意識の高まりからと受け止められる。
 ただ、地方は車を主な移動手段とする。高知県内でも返納が増えたが、公共交通機関が限られ、買い物や通院の必要性から踏み切れないという声も聞かれる。代替手段を充実させないままでは生活の質を低下させることにつながりかねない。
 代替策が簡単ではないことは、これまでの取り組みが十分には機能しなかったことから明らかだ。だが、そうであっても、事故のリスクを下げながら生活を維持する小回りの利く方策を模索していくしかない。
 新たな制度が始まり、生活の支援策は待ったなしになる。地域の実情に合った支援の充実は、高齢者の健康や生きがいに関わる。個人の問題にとどまらず、集落の機能維持にも影響する。地域社会全体で取り組んでいく課題だ。

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