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2022.05.05 08:00

【「こどもの日」に】「侵攻」をどう伝えるか

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 海の向こうの無慈悲な映像が今日もニュースで流される。砲弾で破壊された街、家族を亡くして泣き崩れる人々、薄暗い地下の生活で厳しい生活を送る子どもたち…。
 ロシアによるウクライナ侵攻は、長らく平和を享受してきた日本人の多くに衝撃を与えた。力のある国が隣国へ一方的に攻め入ること、一般市民の命が理不尽に奪われること。遠い世界の話だった「戦争」が現実に起こるのだ、ということを思い知る日々が続いている。
 世界の歴史と秩序がリアルタイムで塗り替えられている中で「こどもの日」を迎えた。インターネット、交流サイト(SNS)全盛の時代、小さな心も戦争の情報にさらされている。子どもたちの健やかな成長を願うのは当然だが、現状をきちんと伝えることもまた、大人の責任と言えるだろう。
 戦争を子どもたちにどう伝えるか―。日本ユニセフ協会などが、その際の留意点を示している。それによれば、まず子どもたちが状況をどこまで知り、何に不安を持っているか確認すること。その上で年代に応じた対応をすることだという。
 幼少期向けには、不安を解消してあげた上で、国の概念、各国の考え方が必ずしも同じでないこと、命や歩み寄る行為の大事さ、といった内容を説くことになる。アニメや特撮と現実を混同する世代でもある。違いを丁寧に教えたい。
 中学生以上になれば、授業内容に応じた基礎知識をベースに、理解を促すことになるだろう。
 ただ、「きちんと伝える」ことは非常に難しい作業でもある。さまざまな情報が出回る中、何が本当で何がうそか。国や立場によっても情報の捉え方が異なる。
 そうした中だが、この「戦争」に関心を持つ大切さは普遍的なものだ。同じく、人類の普遍的な価値である「基本的人権」「民主主義」「法の支配」などを念頭に置けば、伝え方も偏らないのではないか。
 どこかをことさらに「悪者」扱いすることは、人種差別や偏見を助長する。ジェンダーやLGBT(性的少数者)など多様性を認め合っていく時代であり、慎重でありたい。
 間もなく成人になる世代には、今回の侵攻によって日本もまた、大きな岐路に立ちつつあるということを知ってもらいたい。
 戦争が現実に起こったことで、国内でも東アジアの安全保障論議が再燃してきた。敵基地攻撃能力(自民党提言では「反撃能力」に改称)の保有論議に象徴されるような「備え」の強化を訴える声が強まり、これまで貫いてきた「専守防衛」との整合も問われだした。食料やエネルギーの安全保障でも、ロシア抜きの戦略を求められ始めている。
 懸念するのは、子どもたちが一方的な主張だけに接し続けたり、極論をうのみにしたりすることだ。身近にいて信頼できる親や指導者が、情報の適切な入手方法を教え、健全なリテラシー(読解力)環境をつくっていかなければならない。

高知のニュース 社説

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