2024年 05月10日(金)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2022.04.30 17:33

二十歳になったら一緒に 酒場の約束、かなわず

SHARE

 観光船沈没事故犠牲者の遺体が安置された施設の玄関に張られたメッセージ=30日午後、北海道斜里町

 北海道・知床半島沖の観光船事故で亡くなった東京都葛飾区の加藤七菜子ちゃん(3)は、両親と一緒に乗船していた。「娘が二十歳になったら一緒に飲みにきます」。父親が通っていた近所のバーの男性店主(51)は、七菜子ちゃんの誕生を伝えてくれたうれしそうな表情が忘れられない。「早く見つかって、3人一緒になってほしい」と願うばかりだ。


 初めて店を訪れたのは5年ほど前。1人でやって来て2、3杯飲むのが日課だった。「帰ってきたみたい。行ってきます」。仕事から帰宅する妻から連絡があると駅前で待ち合わせ、2人で夕食に出かけた。


 定位置は入り口から2番目のカウンター席。物静かな口調で、店主と酒談議を交わした。妻が妊娠すると趣味のランニングを控え、太り気味に。「走らないといけないとは思うんですけどね」と笑った。


 「無事に生まれました」。誕生して間もなく店に伝えに来たが、その日を境にぱたっと顔を見せなくなった。「二十歳になったら、ここに一緒に来ます。それまで頑張ってください」。店主との約束を果たそうと、子育てに仕事に追われ、幸せな毎日を送っているんだろうと思った。


 その後、顔を合わせたのは昨年12月、飲み会帰りに訪れた一度きり。事故に巻き込まれたと知って、初めは気持ちの整理がつかなかったが「一人でも多くの人に自分ごととして捉えてほしい」となじみの客に伝えるようになった。

(c)KYODONEWS

国内・国際 N社会

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月