2022.04.30 08:16
【なるほど!こうち取材班 パートナー紙から】旧吉田茂邸 シカ居着く 神奈川県 対応に苦慮の中…事故で幕
旧吉田茂邸があり、緑豊かな県立大磯城山公園
県立大磯城山公園の旧吉田茂邸(大磯町西小磯)。戦後の占領下に就任し、サンフランシスコ講和条約を締結した宰相に思いをはせながら庭園に足を踏み入れたら、程なくして1頭のニホンジカが視界に入ってきた。
体長は1メートル半程度か。竹林に座っていたシカは近寄っても逃げず、あくびを繰り返すなどリラックスした様子だ。
同園の旧吉田邸地区は約3ヘクタールとさほど広くはないものの、緑豊かで静かな環境が整う。旧吉田邸は町が管理しているが、庭園を含めた公園は県の平塚土木事務所が管轄。園を管理している「県公園協会・大磯城山公園」によると、シカは昨年夏ごろに出没し、そのまま居着いたという。
旧吉田茂邸がある県立大磯城山公園内に居着いていた野生ジカ(7日午後、大磯町西小磯)
シカはどこから来たのか。園関係者は一様に「分からない」。町によると、過去に鷹取山がある町西部の山間部で野生ジカの目撃情報があるが、そこからは直線距離で3キロも離れている。
ニホンジカの生態に詳しい丹沢自然保護協会(清川村)の中村道也理事長(75)は、「シカは本来、集団行動。ただ昔と違って生息環境が大きく変わった」と説明。2頭は餌を求めて山から下りてきた可能性がある。
居着いた子ジカは園内で雑草などを食べ、餌の確保に不便はなかったようだ。人に危害を加えた行為は確認されなかったという。
野生ジカとの「共生」状態が半年以上も続いてきたのはなぜか。そもそも、県が地域と取り組む鳥獣被害対策の捕獲対象で、同町でも年に数頭捕獲される。捕獲後は基本的に山に戻すか殺処分、飼育を前提に引き取り先を見つける―といった選択になる。
県平塚土木事務所は「シカは原則的に駆除対象。でもこれまで地域の人たちがかわいがってきたので、できる限り引き取り先を探した」とし、例外的に保護するための最終調整に入っていた。
そんな折だった。15日夕、同町西小磯の国道を横断した1頭の野生ジカが自動車にはねられ死んだとの情報がマイカナ取材班に入った。大磯署によると、現場は城山公園出入り口付近で居着いていたシカとみられ、長く続いた“居候生活”に突然、終止符が打たれた。(神奈川新聞)
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