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2022.04.26 08:45

主役は肉じゃない、人だ ― 行け!焼け!西土佐BBQ(1)

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BBQグリルで肉を焼く下城民夫。国内でのバーベキューの“伝道師”だ(昨年8月、四万十市西土佐用井)

BBQグリルで肉を焼く下城民夫。国内でのバーベキューの“伝道師”だ(昨年8月、四万十市西土佐用井)

 ジューッ、ジュッジュッ、ジュワ~ッ。

 厚さ3センチほどのサーロインステーキが、炭火で熱せられた鉄のグリルに載る。脂がはぜ、肉にまぶされたガーリックパウダー、パプリカパウダーなどのスパイスが香ばしい匂いを放つ。周囲で見つめる人たちが、ごくりと喉を鳴らす。

 昨年8月初旬、猛暑日の四万十市西土佐地域。西土佐ふれあいホール前は、ひときわ熱気に包まれていた。

 ずらりと並んだバーベキュー(BBQ)グリルが、もうもうと煙を上げる。肉全体の硬さが、少し力を入れた手のひらの腹ぐらいになってきた。さあ、いよいよ食べ頃だ。

 まな板で肉が切り分けられると、断面は鮮やかなピンク。えいっと口に放ると、やわらかな肉から肉汁とうまみが広がる。優しい味のスパイスも抜群だ。ふふふっ。思わず頬が緩んだ。

 □  □ 

 「BBQは相手を楽しませる遊び。ホストとゲストに分かれて行うもので、1人じゃ成立しない。肉が中心ではなく、人が中心なんです」

 熱気漂うグリルの前で、テンガロンハット姿の男が熱弁を振るっていた。日本BBQ協会(東京)の会長、下城民夫(61)。聞き手を楽しませるような、アメリカンな装いだ。

 この日は同協会によるBBQインストラクターの初級検定が行われていた。約1時間の座学でBBQの起源や用語を学んだ参加者へのデモンストレーションとして、下城や上級・中級合格者らが腕を振るった。

 ステーキだけではない。こんがり焼かれた鶏肉は、ほぐしてBBQソースとあえ、サンドイッチに。ズッキーニと牛肉の串からはジューシーな肉汁がしたたり、丸ごと焼いたピーマンとシイタケの味わいは驚くほど深い。参加者は一口頬張っては歓喜の声を上げた。

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 盛会となったBBQ検定は、決して単発のイベントではない。西土佐地域では2020~22年度、BBQによる農林水産物の消費拡大策を官民連携で展開しているのだ。

 その名は「しまんとリバーベキュープロジェクト」。下城は言う。「行政と民間が一体となった取り組みで、全国で一番力を入れているチームであるのは間違いないね」

 下城が「遊び」とするBBQが、いかにして大真面目な地域おこしの施策となったのか。その過程には、さまざまな人々の身を焦がすような献身と情熱があった。

 =敬称略(編集部・今川彩香)

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