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2022.04.20 08:00

【中国コロナ対策】強権手法の弊害あらわ

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 新型コロナウイルスの再流行に伴い、中国政府による強権的な対策の影響が国内外に広がっている。
 45都市で何らかの都市封鎖(ロックダウン)が実施され、対象は3億7300万人に上るという。最大の経済都市である上海市では都市封鎖が3週間に及び、消費だけでなく物流や生産も停滞。経済活動に大きな支障が出ている。
 行動を制限された多くの市民が食料や日用品の不足に苦しみ、人権状況も懸念される。従来の厳格な「ゼロコロナ」政策から、より現実に即した対策へと転換すべき時だ。
 中国は2020年1~4月、世界で最初に流行が確認された湖北省武漢市を封鎖した。徹底した監視網と移動制限により、日米欧に先駆ける形で感染を抑え込んだ。
 習近平指導部は、この成功体験を共産党一党体制の優位性を示す成果と位置付け、宣伝材料にも使ってきた。その後2年近く、感染を低水準に抑制したことも確かだ。
 ただ、3月からの再流行は感染力が強い半面、重症化リスクは低いオミクロン株で、衛生当局によると感染者の大半は無症状か軽症という。明らかに流行初期とは様相が異なるものの、習指導部は厳格なゼロコロナ対策を取り続ける。
 上海市では都市封鎖が長期化したにもかかわらず、新規感染者は高水準で推移。連日2万人を超え、目立った効果は出ていない。人の流れを制限しても、隔離された家族内で感染が広がっているという専門家の指摘がある。
 一方で、強権的手法の弊害は日ごとにあらわになっている。22年1~3月期の国内総生産(GDP)は各地の都市封鎖に伴い、物価変動の影響を除いた実質で前年同期比4・8%増にとどまった。政府の通年目標「5・5%前後」を下回り、景気減速が鮮明になった。
 象徴するのが、一都市でGDP全体の約4%を占める上海市だろう。「世界の工場」の窓口である物流都市の機能不全は影響を世界に拡散させた。供給網が寸断され、現地工場のほか、日本国内の製造拠点も操業停止などに追い込まれている。
 影響は経済活動だけではない。隔離措置で買い物もままならず、多くの市民が食料や日用品の不足に悩まされている。通院できなかったり、薬が手に入らなかったりして命の危険を訴える声も後を絶たない。政府が隔離施設にするため、マンションから住民を強制的に立ち退かせようとした事例もあったという。
 人権侵害も危惧される状況ながら、習指導部はゼロコロナ政策に固執しているように映る。異例の3期目入りを目指す今年後半の共産党大会を前に、政策変更によるダメージを懸念しているのかもしれない。
 だが、強すぎる対応で効果より弊害が膨らんでは本末転倒というほかない。中国経済の不調が長引けば、世界経済にも深い影を落とす恐れもある。ウイルスの特性や流行の状況を見定めた、柔軟な対策が求められる。

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