2022.04.01 09:58
首都キーウ、不気味な静けさ 目立つ兵士、市民まばら
ウクライナの首都キーウにある観光名所の聖ソフィア大聖堂(奥)。広場にある銅像には、爆風などから守るための厳重な保護措置が取られていた=3月31日(共同)
【キーウ共同】車が3台並走できるほどの幅広い歩道を行き交う市民の姿はまばらで、不気味な静けさが巨大な街を包む。ウクライナの首都キーウ(キエフ)に共同通信記者が3月31日入った。日本政府が呼称をロシア語由来の「キエフ」からウクライナ語読みに変更すると決めたことに、感激する市民もいた。
記者が31日朝まで滞在していた西部リビウは、石畳の道が細かく入り組み、欧州の古い小さな街並みの趣にあふれていた。前線から離れていることもあり、中心部は日中、大勢の人でにぎわい、飲食店も相次いで再開してきている。
比較するとキーウは、建物や通りの造りが全て巨大。だが中心部を出歩く市民は少ないため、寂しさが異様に際立つ。迷彩服に身を包み自動小銃を肩に掛けた兵士ばかりが目立ち、時折猛スピードで駆け抜ける警察車両のサイレンの音だけが大きく響いた。
ドニエプル川を望む高台の公園には、かつてロシアとの友好を記念して設置されたという大きなアーチがあるが、周辺は立ち入り禁止に。観光名所も全て閉鎖。屋外の銅像が爆風や破片で損傷しないようにするための保護措置も、リビウとは比較にならないほどの厳重さで施されていた。
リビウからキーウへの道中の運転手を務めてくれたのは小児科医のドミトロ・ブロッフさん(36)。14年前からキーウで暮らし、6日からリビウの実家に避難してきた。
31日夕、市中心部を一緒に訪れた。ブロッフさんは故郷も大好きだが「キーウは一つの宇宙みたいな大きな街。また違った魅力がある」という。だがあちこちにバリケードが設けられているのを見て「戦争が終わっても、もう元のすてきなキーウは完全には戻らないのかもしれない」と寂しげな表情も見せた。
歩きながら、日本政府による呼称変更を伝えると「素晴らしい決定だ。お礼を言いたい」と感極まった様子に。空手3段で、日本語も最近学び始めたブロッフさん。首都の新しい日本語表記をメモ帳に書いて示すと、うれしそうに何度も、覚え立ての片仮名を読み上げていた。
午後9時53分、夜間の外出禁止で街が一層ひっそりと静まりかえる中、空襲警報が鳴った。午後11時すぎにふと窓の外を見ると、街灯も大半が消され、漆黒の闇が一国の首都に広がっていた。