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2022.03.31 08:00

【18歳成人】若者に不利益を生むな

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 明治から約140年続いた「大人」の定義が、あす以降変わる。現行20歳の成人年齢を18歳に引き下げる改正民法が施行される。
 法律上、成人になればさまざまな契約ができるなど、権利は大きく拡大する。ただし、権利と責任は表裏一体の存在だ。消費者トラブルなどに巻き込まれる恐れも出てこよう。成人になった若者が不利益を被らないよう注意を喚起しながら、安全網を充実させる必要がある。
 成人年齢引き下げは、憲法改正の国民投票法が2007年に成立し、投票権者を「18歳以上」としたことで議論が本格化した。
 整合性を取る形で16年には有権者の年齢を引き下げる改正公選法を施行。18~19歳の政治参加が始まり、成人年齢引き下げの流れができた。少子高齢化が進む中、若者に幅広く社会参加を促し、活力を高める狙いは理解できる。
 健康への影響や依存症が懸念される飲酒や喫煙、競馬などの公営ギャンブルは「20歳以上」が維持される一方、18~19歳の「新成人」の権利は格段に広がる。親の同意がなくてもローンや携帯電話、アパートなどの契約を結べるようになる。
 だが、主体的に経済活動に加われば、それだけトラブルに遭う危険性も増大する。親の同意がない未成年の契約は民法が定める「未成年者取り消し権」で取り消せるが、18~19歳は4月から成人としてこの保護の適用外になってしまう。
 これまで取り消し権は実際の契約取り消しに加え、被害の予防面でも効果を発揮してきた。事業者が労力を使って契約しても、簡単に取り消される可能性が大きいからだ。悪徳業者に狙われる恐れも比較的低かったと言えよう。
 この保護対象から外れることで、消費者トラブルの被害増加を懸念する声は根強い。成人年齢引き下げの検討から約15年たつものの、十分に対策が講じられたとは言いがたい状況がある。
 18年改正の消費者契約法は、新成人の取り消し権の対象を、進学や就職、容姿などの不安をあおったり、恋愛感情を利用したりして結ばせた契約に限定した。刻々と巧妙化する悪徳商法から若者を守れるのか、不安が残る。
 知識や経験、判断力の不足につけ込んだ勧誘が認められた場合には、広く取り消せるような法整備を図るべきではないか。施行後、明らかになった問題には迅速に対応しなければならない。
 4月1日は成人年齢の引き下げと同時に、改正少年法も施行される。18~19歳を新たに「特定少年」と位置付け、扱いを大人に近づける。家裁から検察官に原則として逆送する対象事件を拡大して厳罰化。起訴後は実名報道が可能となる。
 だが厳罰化によって、十分に成熟していない若者の更生を妨げる可能性もあるのではないか。立ち直りや社会復帰を重視してきた少年法の理念が後退しないよう、慎重な法運用が求められる。

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