2022.03.23 08:41
信号の色をスマホで伝達、誘導音「うるさい」に配慮 高知市に視覚障害者向けシステムを初導入
新システムが導入された交差点の横断歩道を、スマホと白杖を手に渡る中島寿一郎さん=左(高知市幸町)
■音響式信号うるさい? 県内 住民苦情で停止も 視覚障害者ら「理解を」【なるほど!こうち取材班】
県警が信号情報を感知するアンテナを交差点に設置。利用者が「信GO!」という無料アプリをスマホに入れて交差点に接近すると、無線通信を通じて信号情報がスマホに届く仕組み。「南北方向が青」「南側の東西方向が赤」などとスマホから音声が流れる。導入費用は1交差点あたり約100万円。
「カッコー」「ピヨピヨ」といった音で信号の色を伝える音響式信号は県内に247基ある。夜間や早朝は誘導音が消されているものの、一部では住民から「うるさい」と苦情が寄せられ、昼間も音を消したり、音量を下げたりする事例が起きていた。
視覚障害者からは「音が聞こえないと、命懸けで交差点を渡らないといけない」との訴えもあり、県警交通規制課は「住民の生活も侵害できず、どのように交通弱者を守れるのか悩んできた」と説明。「今回導入したシステムで、今より安全に歩行ができるのではないか」としており、今後も要望を踏まえて導入を検討するという。
ただ、当事者からは不安の声も。近くの宝町に住む視覚障害者の中島寿一郎さん(75)は「システム導入はありがたい」としつつ、「難聴なので、風や雨の音でスマホの音声が聞こえにくい。荷物や白杖(はくじょう)を手にスマホを持つのは難しい」とも指摘する。
県視覚障害者協会の中島正美さん(62)=高知市朝倉甲=は「スマホを持つ視覚障害者が少ないのが現状。今回のシステムはないよりあった方がいいけど、まずは県民のみなさんに音響式信号機の重要性を知ってもらいたい」と訴えている。(乙井康弘)