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2022.03.22 05:57

言葉出ず悔い残すカウンセラー 雪崩事故で8人犠牲の高校退職へ

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 栃木県立大田原高で取材に応じるスクールカウンセラーの丸山隆さん=2月、大田原市

 2017年3月、栃木県那須町で登山講習中の8人が死亡した雪崩事故から27日で5年。山岳部員7人、教員1人が犠牲となった県立大田原高で、スクールカウンセラーとして事故直後から心のケアに当たった臨床心理士の丸山隆さんは、70代という年齢もあり約10年勤めた同校を3月末で去る。喪失感を抱えた生徒らに「自分を抑え込まないで」と語りかけてきたが、痛切な思いを前にして「十分な言葉を与えられなかった」と、今も悔いを残す。


 丸山さんは事故2日後の全校集会で、事故を見聞きしたことによって起きる心身の不調や、その対処の仕方などを説明。ただ、短時間で基本的な内容にとどまったため、本格的なケアは後日に行うつもりだった。


 しかし学校は春休み中で、報道関係者が校舎を取り囲む状況もあり、生徒の登校は無理だった。「1週間ぐらいはよく話を聞いてあげることが大切なのに。必要なケアができずもどかしかった」


 新学期が始まると、事故後の正直な気持ちやショックとどう向き合っているのか、グループで話し合ってもらった。


 冒頭、生徒らには「他の人の話を聞いたら『ありがとう』と言うように」と伝えた。「礼を言うことで他者を受け入れ、言われた方もさらけ出していいんだと思える。自分を表現し、受け止めてもらえることが重要」と考えたからだ。


 事故に伴う反応は性格や立場によって異なる。中でも「なぜ彼は死んだのに、自分だけ生きているのか」という自責のような感情を抱えていた生徒と向き合ったことは、後悔とともに思い出す。


 カウンセリングの仕事は今後も続く。「共感を生む言葉を与えられなかったのは、彼らほどの深刻な感情が自分に乏しかったから。もっと人生経験を重ねて良いケアをしていきたい」。

(c)KYODONEWS

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