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2022.03.12 08:00

【韓国大統領選】日韓関係の仕切り直しを

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 韓国大統領選は、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユンソンニョル)前検事総長が革新系与党候補との戦いを制した。1ポイントを下回る僅差となったが文在寅(ムンジェイン)政権の路線継承が拒否され、5年ぶりに保守政権が誕生する。
 戦後最悪といわれる日韓関係を改善する契機ともなる。日本側は文政権下での進展は期待薄とみていただけに、対話を重ねて解決への道筋を探っていきたい。
 朴槿恵(パククネ)前政権が不祥事で退陣したことを受け、文政権は公正な社会の実現を訴えた。しかし、政治への期待を裏切る事態は断ち切れなかった。不動産価格の高騰も反発を強め、特に若者の失望を招いた。
 選挙戦では、候補双方に本人や家族の疑惑が浮上し、中傷も相次いだ。政治不信の強まりで投票率低下が危惧されたが、前回選挙並みにとどまったのは外交、内政ともに山積する課題の大きさの裏返しであり、対応への期待だろう。
 新型コロナウイルス禍からの経済再建や貧富の格差是正、住宅対応などは急務だ。尹氏に政治経験がないことは不安視もされ、清新さとも見られただろう。少数与党となる国会で力量が試されることになる。
 韓国の合計特殊出生率は0・81まで下がった。経済協力開発機構(OECD)加盟国では最も低い。
 原因として、若者の将来に対する不安が挙げられる。貧富の格差が拡大する中、学歴偏重がもたらす教育費の増大、不動産価格の高騰など経済的な負担がのしかかる。女性への子育て負担の集中や、社会参画への意識変化も指摘される。
 一方で、男女間の対立も強まっているといわれる。尹氏は女性の社会的地位向上などを担う「女性家族省」の廃止を掲げ、男性だけの兵役に反対する若い男性から支持を受けた。世代間、男女間の分断を広げないよう対応には注意が必要だ。
 複雑化する国際情勢への対応も怠れない。北朝鮮の核・ミサイル開発に対する抑止力確保を主張するなど圧力路線を取る方針を示す。国際協調を打ち出し、日米韓の連携強化に取り組む意向という。安全保障面で一致した取り組みができることへの期待は大きい。
 日韓関係について尹氏は、「未来志向」と言及している。健全な関係を取り戻すようなら歓迎だ。
 韓国は従軍慰安婦問題を巡る日韓合意を事実上白紙化し、元徴用工訴訟では日本に賠償を求めた。こうした動きに日本側の反発は根強い。
 一方、日本政府による対韓輸出規制強化は報復と受け取られ、韓国世論は硬化した。「佐渡島(さど)の金山」(新潟)の世界文化遺産推薦も反発している。歴史問題の溝を埋めるのは簡単ではない。
 岸田文雄首相と尹氏は電話会談し、関係改善へ向けた協力や北朝鮮対応での緊密な連携を確認した。日韓関係が行き詰まったままでは地域の安定は遠のいてしまう。前向きの関係の構築を互いに意識しながら、改善への歩みを重ねていくことが欠かせない。

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