2022.03.01 08:39
カツオのあらで堆肥作り、無農薬野菜栽培 循環型農業目指す 高知県中土佐町久礼に移住した中里さん夫妻
仕込みから1週間程度たち、湯気が上がるカツオ堆肥の様子を見る中里拓也さん(写真はいずれも中土佐町久礼)
中里拓也さん(49)=神奈川県出身、早紀子さん(40)=兵庫県出身=夫妻。拓也さんは米国の大学で20年ほど生物の進化について研究し、教員も務めた。「田舎暮らしがしたい」と2013年に母の実家のある同町にIターン。高知県を気に入り、東京の会社員を辞めて安芸市の県東部観光協議会で働いていた早紀子さんと知り合い、17年に結婚した。
拓也さんは農業未経験だったが、母親を手伝いながら徐々に栽培技術を習得。当初から自然の力を引き出す農業を目指し、土作りに力を入れていた拓也さん。同町の名物イベント「カツオまつり」で大量に出るあらを堆肥として活用しようと研究を続け、昨夏から本格的に製造している。
仕込みから3カ月のカツオ堆肥。臭いはほとんどない
現在はキャベツやニンジン、ショウガなど約30品目を栽培。早紀子さんは営業職の経験を生かし、「中里自然農園」を立ち上げ宅配事業に乗り出した。会員制交流サイト(SNS)で農園のコンセプトを発信するなど消費者とつながることを意識。畑に足を運んでくれる顧客もいるという。
カツオ堆肥を使った野菜を出荷する中里早紀子さん
拓也さんは、漁網や船から除去したカキ殻のほか、町内で栽培されているキクラゲの廃菌床や焼酎かすなどの堆肥化も検討。「まだまだ研究段階だが、身の回りで完結するコンパクトな循環型農業を目指したい」と将来を見据える。(富尾和方)