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2022.02.21 08:00

【北京五輪閉幕】競技の公平性が揺らいだ

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 北京冬季五輪が17日間の日程を終えて閉幕した。昨夏の東京五輪に続き、新型コロナウイルスが流行する中での異例の大会だった。
 91カ国・地域から約2900人の選手が参加し、日本勢は約120人で挑んで活躍した。冬季五輪の1大会で日本選手最多のメダル4個を獲得したスピードスケートの高木美帆選手ら、自らの限界に挑戦したアスリートに心から敬意を表したい。
 選手の躍動がスポーツの「光」ならば、「闇」も強く感じさせる五輪となったのが残念でならない。
 ロシアは薬物使用と決別できていないのか。世界に衝撃が広がった。フィギュアスケートで金メダル候補だったロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ選手にドーピング問題が発覚した。
 2014年のソチ冬季五輪で、国ぐるみのドーピング違反が判明。制裁で国として五輪に参加が認められておらず、ROCの個人選手として出場している状態だ。
 ワリエワ選手は昨年12月の検査で禁止物質トリメタジジンに陽性反応が出た。誰が15歳の選手に摂取させたのか。陽性の通知になぜ時間がかかったのか。さまざまな疑問点があり、真相の解明が急がれる。
 ロシア側は、16歳未満の「要保護者」に当たるとして五輪出場を求めた。スポーツ仲裁裁判所(CAS)は認める裁定を下したが、判断は適切であっただろうか。
 ワリエワ選手は成績が暫定的な扱いで、ROCが優勝したフィギュア団体の表彰式も行われず、異常な状態が続いている。女子フリーでミスを重ねて4位に沈み、泣き崩れた姿は悲痛だった。精神面の深刻なダメージも懸念される。
 ドーピング問題が再燃した一因には、冬季スポーツ大国のロシアに配慮し、全面出場禁止など毅然(きぜん)とした対応を取らなかった国際オリンピック委員会(IOC)の姿勢も指摘される。今度こそ実効性のある制裁を科すべきだ。
 スキー・ジャンプ混合団体では、日本の高梨沙羅選手ら女子5人がスーツの規定違反で失格となった。検査方法が通常と違い、極端に厳しかったと問題化している。基準が変わるなら事前の周知は責務であろう。
 スノーボードでは不可解な採点が相次ぎ、主観的な印象で点を決める方式が問われた。男子ハーフパイプで初の「金」に輝いた平野歩夢選手も、技の回転数など「全部を(数値で)測れるようなシステムを整えていくべきだ」と訴えた。
 失格が続出したスピードスケート・ショートトラックでは、中国に有利な判定を疑う声が上がっている。
 選手からの疑義に、運営側は説明責任を果たしたとは言い難い。この大会は当初から、中国の人権侵害やIOCの「行きすぎた商業主義」などが問題視された。加えて、選手のことを第一に考える「アスリートファースト」も揺らいだ形だ。
 スポーツの価値は公平性の上に成り立つ。何のため、誰のための大会か。五輪の意義が問われている。

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