2022.02.19 08:35
NTT西日本の〝イチゴ工場〟高知県佐川町の農家協力で味や品質向上、関西の百貨店で販売
佐川町のイチゴ栽培のノウハウを生かし、植物工場で生産された「N.BERRY」(同町役場)
NTT側によると、2018年に大阪市内の同社ビルの空きスペースを活用して実験的にイチゴ栽培を開始。光や水を管理し、気候に左右されず、安定的なイチゴ生産を目指した。
品質向上の参考にしようと19年2月、NTT側や関西圏の仲卸、小売業者らで西日本を中心に十数種類のイチゴを食べ比べ。味や香り、見た目などを総合的に判断し、満場一致で佐川で栽培された「ゆめのか」が選ばれたという。
協力依頼を受けたJA高知県佐川支所苺部会の農家は、何度も工場を訪れ、水やりや光の当て方などをアドバイス。NTT側も佐川町のイチゴハウスにセンサーやカメラを設置し、おいしいイチゴを生み出すための温度管理などのデータを取得した。
結果、糖度が上がり、色もしっかりした大玉のイチゴが工場で生産できるように。現在は兵庫県宝塚市の工場(約200平方メートル)で約1万株を栽培している。
植物工場で生産されているイチゴ(大阪市内=NTTビジネスソリューションズ提供)
苺部会の植田正和部会長(48)や16年発行の同会40周年記念誌によると、佐川地区でのイチゴ栽培は3戸の農家が1977年にスタート。ピークの2000年には265トンを生産したが、現在は14戸150トン弱に減少している。農家の高齢化も進み、60代半ばが部会の中心だ。
そんな中、同部会は研究に励み、「甘さが凝縮しつつほどよい酸味があり、バランスがいい。水分も多くジューシー」(植田部会長)と胸を張るイチゴの栽培技術を確立。5年ほど前から高級スーパーを含め県内外からの引き合いが増えている。
植田部会長はNTT側との連携について「おいしいイチゴを追い求めてきたことが認められうれしい」。工場でのイチゴ栽培を担うNTTビジネスソリューションズ(大阪市)の担当者は「一緒に佐川町を盛り上げたい。イチゴ栽培に挑戦したいと思った人の選択肢に入るよう、佐川をPRしていく」と話している。(楠瀬健太)