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2022.02.16 16:46

葛藤の先、国境越えてかなえた夢 蘇翊鳴「金」、導いた佐藤コーチ

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 スノーボード男子の中国の蘇翊鳴(右)を育てた佐藤康弘コーチ=7日、張家口(共同)

 【北京共同】葛藤の先に格別な瞬間が待っていた。15日の北京冬季五輪スノーボード男子ビッグエアで、蘇翊鳴(中国)を金メダルに導いた佐藤康弘コーチ(47)。日本のトップ選手を育てながら「国と国との懸け橋になりたい」と、国境を越えて求めた夢をかなえ「本当に幸せ。やってきたことは間違っていなかった」と胸を熱くした。


 広島県出身。語学留学したカナダで始めたスノーボードのプロとして活動しながら、30代前半に鬼塚雅(星野リゾート)らを教える立場に専念し始めた。大塚健(バートン)が中国の大会で活躍する姿を見て、門をたたいたのが蘇だった。


 蘇のコーチとして帯同した2019年の世界ジュニア選手権。教え子の日本選手が1、2位に入ったものの、表彰式で流れる君が代を聴く心境は複雑だった。「感動しても、どっぷり入っていない自分が少し寂しくて…」と悩んだ。


 周囲からは冗談で「非国民」と言われ、2人で訪れた中国のスーパーでは店員から蘇が「(日本人といて)大丈夫?」と聞かれることもあったという。日本選手だけにするべきなのか―。自問自答する日々だった。踏ん切りがつかない中、新型コロナウイルス禍が思わぬ形で契機となった。


 中国との往来が厳しく制限。国と国の壁を改めて実感したが、毎日のように練習動画が届き、助言を求めるひたむきな姿勢に「会えなくてもずっと信じてくれた」と心を打たれた。競技を通した日中の橋渡し役を「やっている意味は大きい。(二国間の)真ん中にいるべきだ」と確信した。


 指導を始めた当初は横3回転もできなかった蘇は驚異の進化を遂げ、母国の五輪で圧巻の5回転技を連発。「僕の人生を変えてくれた」と感謝する17歳の新星を涙ながらに何度も抱きしめた。

(c)KYODONEWS

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