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2022.02.07 08:42

在宅で療養、看取りたい...高知県内で希望増 コロナで面会制限「会えなくなる」訪問診療体制整備に課題

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新型コロナウイルスの影響で在宅療養を選んだ患者宅に訪れた伊与木増喜医師(高知市内)

新型コロナウイルスの影響で在宅療養を選んだ患者宅に訪れた伊与木増喜医師(高知市内)

 新型コロナウイルス下で高知県内の病院や施設の面会が制限される中、在宅での療養や看取(みと)りを希望する患者や家族が増えている。診療に携わる医師らは「コロナでこれまで以上に、在宅療養や在宅看取りの意義が注目されている。今後も増えるのではないか」と話す。

 昨年12月、森田徹生さん(88)=土佐市新居=は生まれ育った家で家族に見守られ、眠るように息を引き取った。妻のサエさん(86)らが「そっちで落ち着いたら迎えに来てよ」「ありがとう」と顔や手をさすりながら声を掛け続けた。

 徹生さんは5年前からグループホームに入所していたが、コロナで面会が禁止された昨春ごろに体調が一変。娘の早百合さん(64)は「家族と会えない寂しさから鬱(うつ)のようになって日に日に弱っていきました」と振り返る。

 その後、入院や施設入所を繰り返すうちに認知機能が落ち、会話や食事もできない状態に。昨年11月に病院の療養病床に転院。そこではコロナ下、月に1度10分間、オンラインで面会することしかできなかった。

 徹生さんはグループホーム入所以降、家族と会うことが生きる糧だったという。家族は、徹生さんが転院先のロビーで偶然旧友と再会して号泣する姿を見て、覚悟を決めた。

 「こればあ分かっちょったら家でみた方がいい。次会うときは死んじゅう。今、連れて帰らな後悔する」

 亡くなるまでの1カ月間は、かかりつけ医のほか訪問看護師やヘルパーが毎日訪れ、穏やかに過ごした。県外から孫やひ孫も帰省し、にぎやかな時間も持てた。

 早百合さんは「会話はできんけど、声を掛けると返事をしていたし、自分が家に帰ってきたことは分かっちょったはず。本当にこれでよかったかは分からんけど…。でも最期は家族に囲まれて『良(え)い仕舞(しま)い』やったと思います」と話した。

 □ 

 在宅療養に携わる県内診療所や訪問看護ステーションによると、コロナ以降、在宅療養や看取りを選ぶケースが増えているという。

 病院や施設の面会制限により、最期の時間を一緒に過ごせない可能性があるためで、森田さんのような高齢者のほか、末期のがん患者が病院から戻ったり、在宅療養中に体調が悪化しても入院を選ばないなどの事例が多い。

 高知市鴨部の「かもだの診療所」では、訪問診療の対応患者数が、コロナ前の2019年は月平均61・9人だったのに対し、21年は36%増の84・1人に増えた。土佐市蓮池の「伊与木クリニック」も、21年の在宅看取りの件数がコロナ前から倍増して25件となった。

 県医師会の常任理事も務める「伊与木―」の伊与木増喜医師は、「家族の介護負担は高まるが、患者は住み慣れた家で最期の時間を過ごすことができる。在宅看取りを経験した家族の多くは、もちろん悲しみはあるが満足感も高い」。

 さらに「看取りではQOL(生活の質)を保つためのケアが主体になる。コロナ下、(患者側に)在宅での療養や看取りに対する意識が浸透しつつある」と指摘する。

 一方、高まる在宅サービスのニーズに提供体制が追いついてない現状もある。

 県内の複数の診療所や訪問看護ステーションが、マンパワーの不足を指摘。「かもだの診療所」では、末期のがん患者は優先的に対応するものの、慢性疾患を抱えた高齢者は相当数、断らざるを得ないという。

 訪問診療に特化した「みなみ在宅クリニック」(高知市南御座)も、希望する患者をやむなく断るケースがある。南大揮院長は「医師1人で診られる人数は限られる。高知は在宅医が少なく、何とか増やしていかなければ」と話している。(石丸静香)

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