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2022.02.03 08:00

【北京五輪開幕へ】問われる安心と融和

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 北京冬季五輪があす開幕する。一部の競技は先行して始まっている。
 新型コロナウイルスのオミクロン株が世界的な流行をみせる。「ゼロコロナ」をうたう中国で、厳戒態勢の下での大会になる。
 アスリートの活躍が期待される一方、開催国に対する懸念や不信も渦巻いている。五輪憲章には「オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会を奨励すること」とある。理念に沿っているのか。大会の意義が問われている。
 日本は冬季最多となる約120人の選手団で挑む。3連覇が懸かるフィギュアスケートの羽生結弦選手をはじめ、ジャンプやスピードスケート、スノーボードなどで活躍が期待される。どの選手も磨き上げた競技力を存分に発揮してほしい。
 中国にとっては威信を懸けた大会だろう。習近平国家主席は、今年後半に予定されている共産党大会で異例の3期目入りをにらむ。失敗は許されない局面とされる。
 これまで、感染拡大を厳格な隔離や都市封鎖といった強硬措置で封じ込めてきた。大会でもゼロコロナの姿勢を貫く。
 海外客受け入れを断念し、チケットも一般に販売しなかった。大会参加者はワクチン接種が事実上の義務で、出国まで外部と接触を遮断した「バブル」内で過ごす。
 ただ、オミクロン株は極めて感染力が強い。空港検査やバブル内で関係者の感染確認が相次いでいる。従来のような封じ込めが可能なのか。行方が懸念される。
 この大会は、国際社会で深まる分断と対立も浮き彫りにした。
 欧米の主要国は大会に政府代表団を派遣しない「外交ボイコット」を行う。中国当局による新疆ウイグル自治区や香港などでの人権侵害に抗議するためだ。日本も「ボイコット」はうたわないものの、政府代表団の派遣を見送った。
 こうした動きに中国は強く反発している。開会式に出席予定の首脳はロシアのプーチン大統領らに限られた。2008年の北京五輪では日米など80人以上が顔を合わせたのとは隔世の感がある。
 中国はメンツをつぶされたと受け取ったかもしれないが、人権問題が批判されるたびに「内政干渉」と反発してきた。国際社会の不信は自ら招いたと言わざるを得ない。
 北京五輪組織委員会は、大会中の抗議活動は「処罰の対象」と明言している。あくまで力で抑え込もうとする姿勢に、内外の不信感は高まるばかりだ。
 入国した選手や報道関係者からは身の安全を懸念する声が上がっている。国際人権団体は「北京では言論の自由が保障されていない」として抗議活動を控えるよう呼び掛け、大会開催を決めた国際オリンピック委員会(IOC)を批判している。
 大会参加者が安心して競技や報道に取り組めない状況は異常というほかはない。IOCはそうした批判をどう受け止めるのか。その姿勢も問われている。

高知のニュース 社説

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