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2022.01.25 08:00

【核禁止条約1年】問われる日本の本気度

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 核兵器を非人道兵器とし、開発や保有、使用などを全面的に禁止する「核兵器禁止条約」の発効から1年になった。
 核の非保有国が主導して制定し、今年3月に初の締約国会議が予定されている。閣僚らのハイレベル会合で、核廃絶に向けた強い政治メッセージの取りまとめを目指す。
 米英仏中ロの核保有五大国はこの条約に強く反対している。米国の「核の傘」に依存する日本も署名していない。
 核保有国と非保有国の溝は深い。唯一の戦争被爆国として「橋渡し役」を自任する日本は役割を果たせるのか。被爆地・広島選出で核軍縮をライフワークとする岸田文雄首相の本気度が問われている。
 五大国に核保有の特権を認める核拡散防止条約(NPT)体制下で、保有国による核軍縮協議は停滞し続けた。そうした状況に対する非保有国の強い危機感がある。
 NPTに加盟する非保有国のうち半数近い86カ国・地域が核禁止条約に署名し、批准した数は59に上る。
 この動きをけん制するように今月初め、核保有五大国の首脳は異例の共同声明を発表した。核戦争の回避を「最大の責務」とし、NPTで課された「誠実に核軍縮交渉を行う義務を確認し合った」とする。
 とはいえ、現実は逆行していよう。米中ロによる極超音速兵器の開発競争は激化し、英国は核弾頭の保有数の上限を引き上げた。五大国は共同声明に具体的な行動を伴わせる責任がある。
 米国は、日本などの同盟国にも核禁止条約に反対するよう圧力をかけている。日本と同じく米国の「核の傘」に頼る北大西洋条約機構(NATO)加盟国にも求めているが、ノルウェーとドイツは締約国会議にオブザーバーとして参加する。
 最初に表明したノルウェーは、同盟の信頼を損ねずに核軍縮進展を図ることは可能だとし、「橋渡し役を担う」と強調している。
 十数カ国がオブザーバー参加をする見通しで、国際協調で核軍縮を促そうとする流れが生まれている。日本もこの流れに参加し、核廃絶に貢献する道筋を探るべきではないか。
 核禁止条約の実現には、広島、長崎の被爆者らの訴えが国際世論を高め、推進力になった経緯がある。しかし、米国の意向に従い、条約に背を向ける日本の姿勢は非保有国の失望を招いている。
 岸田首相は今月、就任後初めての施政方針演説で、勇気を持って「核兵器のない世界」を追求すると訴え、世界の有識者らによる「国際賢人会議」創設を表明した。
 それに併せて、核保有国と非保有国の「橋渡し役」を務めれば、国際社会への貢献度は高まるだろう。
 昨夏の全国世論調査では、日本が条約に参加すべきだと考える人は71%、締約国会議に出席すべきだとする人も85%に上った。岸田首相は国民の声を重く受け止めるべきだ。
 核廃絶に向け、日本もあらゆる努力を尽くす姿勢を行動で示したい。

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