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2022.01.24 08:00

【統計書き換え】事なかれで自浄作用なく

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 建設受注統計の書き換え問題で、国土交通省の第三者委員会が検証報告書を公表した。何度も是正する機会がありながら自浄作用が働かず、二重計上などの不適切な処理が漫然と続いた実態が浮かび上がる。
 第三者委は「幹部職員に責任追及を回避したい意識があった」と批判。寺脇一峰委員長は記者会見で「見る人によっては隠蔽(いんぺい)工作と評価されても仕方ない」と断じた。国交省は関係職員を処分したが、「事なかれ主義」の結果、政府統計や国交省が失った信頼はあまりに大きい。
 この建設工事受注動態統計調査は、政府の統計でも特に重要な「基幹統計」に位置付けられる。
 事業者約1万2千社を抽出調査して、建設業界全体の受注動態を推計する。国内総生産(GDP)算出のほか、政策立案や景気の判断に幅広く活用されている。
 国交省は、毎月の提出期限を過ぎて調査票が提出された場合、遅れた報告実績も最新月分に合算するよう都道府県に書き換えさせていた。調査がスタートした2000年から書き換えを指示しており、前身の調査でも行われていたという。
 13年4月以降は、未提出だった事業者の受注実績をゼロとせずに推計値を計上する処理方法に変更されたが、書き換えによる合算処理も続けたため、同一事業者の受注に二重計上が生じていた。
 事業者の報告をなるべく生かすための処理だったとするが、生のデータに手を加えれば統計の生命線である正確性を損なう。本末転倒と言わざるを得ない。
 こうしたずさんな処理について、担当部署にも疑問の声はあった。報告書によると、複数の職員が書き換えの中止や総務省への報告を提案したにもかかわらず、責任回避を図った幹部職員が黙殺して、公表しなかったという。
 19年11月には会計検査院に問題を指摘されたものの、その後も二重計上を継続。21年4月の推計方法変更に潜り込ませて事態を収束させようとしていた。報告書は人員不足も原因に挙げてはいるが、「事なかれ主義」もここまでくれば隠蔽と言うほかないだろう。
 総務省も昨年8月に問題を認識しながら、国交省に公表を要請していなかった。国交省から相談を受けた際には、たらい回しのような対応も確認されている。ここでも事なかれ主義がのぞく。
 中央省庁に広がる事なかれ主義の影響は、決して統計問題にとどまるまい。硬直した組織のありようを示す一現象にすぎないのではないか。国交省ではずさんな公文書管理も判明している。調査票の廃棄時、公文書管理法に反して内閣府との協議を怠っていた。
 新型コロナウイルスの感染拡大で社会、経済のさまざまな課題が浮き彫りになっている。率先して問題解決に当たるべき中央省庁の現状は心もとない。信頼回復には再発防止はもちろん、組織の在り方そのものを見直す必要がある。

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