2022.01.16 08:00
【電気自動車】問われる日本勢の底力
国内ではソニーグループが今月、EV参入を本格検討していると表明した。EVに慎重姿勢とみられていたトヨタも巨額を投資して本格展開し、先行する欧米勢などを猛追しようとしている。日本が培ってきた自動車産業の国際競争力を次世代につなげる必要がある。
地球温暖化対策で脱炭素化が迫られ、ガソリン車への規制強化が進んでいる。例えば、欧州連合(EU)は2035年にハイブリッド車(HV)を含めたガソリン車の新車販売を禁止する方針だ。
EVは次世代車の有力な選択肢と言える。巨大なビジネスチャンスをものにしようと、各社は開発にしのぎを削る。一昨年、米EV専業大手テスラの時価総額がトヨタを抜いたのは、急成長する市場への期待感の表れだろう。
EVは電気で駆動力を生みだす。エンジンに関連する高度な技術や多くの部品も必要としない。そのため、ガソリン車に比べて異業種企業でも参入しやすいとされる。
海外でも、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業や中国のスマートフォン大手、小米科技(シャオミ)など、電機系企業の参入が相次ぐ。米アップルのEV計画も取り沙汰されている。
ソニーは「人工知能(AI)やロボット技術を最大限活用し、モビリティー(乗り物)の可能性をさらに追求する」としている。カメラやスマホで培ったセンサーや通信技術を使った試作車も発表した。
ゲームや音楽に強い会社の看板を生かし、エンターテインメントも充実させるという。従来の車造りになかった新しい発想で、市場を活性化することを期待したい。
大手自動車メーカーも対応を急ぐ。ホンダは40年の新車販売を全てEVと燃料電池車(FCV)にする「脱ガソリン」を打ち出した。日産自動車は電動化対応に今後5年で2兆円を投資する。
トヨタはHVやFCVも含めた「全方位戦略」を維持しながら、30年のEV販売目標を350万台、投資規模を4兆円と大幅に積み増す。
参入や競争が進めば、自動車産業の勢力図が大きく変わる可能性がある。ただ、既存メーカーは消費者が求める高い安全性といったノウハウの蓄積に一日の長がある。その信頼感やブランド力を生かせるかどうかが生き残りの鍵を握ろう。
EVの普及に向けては、1回の充電に時間がかかることや、充電設備の整備が進んでいないなど課題も多い。世界市場を考えれば、新興国では電気のインフラが乏しいといった根本的な問題もある。
日本ならではの技術開発ときめ細かな対応力で乗り越えたい。家電や半導体など、日本の得意分野が衰退してしまった中で、自動車は国際競争力を維持してきた。100年に一度といわれる車造りの変革期に、日本産業の底力が問われている。