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2022.01.10 08:00

【核保有国声明】軍縮へ具体的行動示せ

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 米国、ロシア、英国、フランス、中国の首脳が核戦争の回避を「最大の責務」とうたった、異例の共同声明を発表した。核兵器を保有する五大国が、核拡散防止条約(NPT)で課された「誠実に核軍縮交渉を行う義務」を確認し合った意味は決して小さくはない。
 だが、共同宣言と現実の乖離(かいり)はあまりに大きい。米中対立などを背景に核軍縮とは逆行する動きが目立つ。現状を踏まえれば、非保有国の批判を回避するためのパフォーマンスとみざるを得ないだろう。核軍縮への姿勢はあくまで行動で示さなければならない。
 五大国に核兵器保有を限定した上で他国に保有を禁じるNPTは、ほとんどの国連加盟国が参加する核の国際秩序の基盤と言える。5年ごとに開かれる再検討会議は、核軍縮の取り組みを検証する重要な機会となってきた。
 だが、近年はNPT体制の限界も目立つ。2015年に開かれた前回会議は最終文書さえ採択できなかった。NPT体制下で特権を持つ保有国の軍縮が停滞し続け、非保有国に募った不信感が交渉決裂の要因になったといってよい。
 そうしたNPT体制に対する非保有国のいら立ちが、17年の「核兵器禁止条約」採択につながった。核兵器の開発や保有、使用などを全面的に禁じる内容で、昨年1月に発効した。3月には第1回締約国会議も予定される。
 五大国は本格化する核禁止条約の動きに神経をとがらせていよう。非保有国が主導する形で核戦力削減の議論が進むことにでもなれば、保有国の優位性が損なわれる可能性はより大きくなる。
 今回のNPT再検討会議は新型コロナウイルスの流行でまた延期されたが、開催予定に合わせた五大国の共同声明は、核禁止条約の動きをけん制する思惑があったとみて間違いあるまい。
 NPTの柱と言える核軍縮交渉の義務と外交的な取り組みの追求を強調し、戦争回避と戦略的リスクの軽減などをうたった。だが、実態はむしろ、軍拡の様相を見せている。
 米中ロによる極超音速兵器の開発競争は激化し、英国は核弾頭の保有数の上限を引き上げた。台湾を巡る米中、ウクライナをにらんだ米欧とロシアの対立は戦略的リスクを高めている。共同宣言が具体的な行動を伴っていないのは明らかだ。
 こうした状況に、非核保有国の不満は限界に近づきつつある。日本同様、米国の「核の傘」に依存する北大西洋条約機構(NATO)加盟国のノルウェーやドイツが、核禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を表明したのはその表れだろう。
 再検討会議は今夏の開催で調整が進むが、果たして五大国は具体的な核軍縮の道筋を示すことができるかどうか。また交渉決裂となれば、NPT体制の地盤沈下、五大国の信頼失墜は避けられまい。唯一の戦争被爆国である日本がどう核軍縮に貢献するかも問われている。

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