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2022.01.09 08:37

夜須の山中に巨大石垣 明治の石工の技術光る 高知県香南市

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巨大な高石垣を前に、県立埋蔵文化財センターの松田直則所長の解説を聞く参加者ら(香南市夜須町夜須川)

巨大な高石垣を前に、県立埋蔵文化財センターの松田直則所長の解説を聞く参加者ら(香南市夜須町夜須川)

 香南市夜須町夜須川の山中に、大きな石垣がひっそりとたたずんでいる。こけむした石組みが時の流れを感じさせる巨大建造物は、明治時代に造られたとされる砂防ダム。あまり知られることもなく立ち続け、当時の石工たちの高い技術を今に伝えている。

 県道夜須物部線沿いの仁井田十二所神社から東へ約300メートル。田畑に囲まれた場所に、「オン谷」の登り口がある。棚田の跡が残る険しい山道を歩くこと40分。谷の奥の端に高さ約11メートル、幅約46メートルの石垣がある。

 地元の石工集団が手掛け、明治30年ごろ完成したと伝わる。県立埋蔵文化財センター(南国市篠原)の松田直則所長(65)によると、自然の石を積み重ねる「野面(のづら)積み」と呼ばれる工法で造られている。

 部分的な傷みはあるものの往時の姿を残しており、計算して積み上げられた石が天高くそびえ立つ姿はまるで城壁のよう。「数メートルの石垣は多くあるが、ここまで大きいものは県内では珍しい」と松田さん。調査に訪れた県外の石垣研究者も、技術力の高さを指摘したという。

 地元には「オン谷に大きな石垣がある」と口に上ることはあったが、実際に訪れた人は少ない。今回山道を整備した地元有志らは「こんな立派なものとは…」とびっくり。子どもの頃から石垣のある棚田を訪れていたという地主の女性は、最近になって曽祖父が建設を率いたことを知ったそう。久しぶりに石垣を目の当たりにして、「歴史的な価値を調べていただき感謝している」と話していた。

 香南市文化財センターは昨年12月25日、松田所長を講師に招き、初めて一般向けの見学ツアーを開催。市内の20人が「どこから石を持ってきたのだろう」などと当時に思いをはせた。登山仲間と参加した淡中幸枝さん(72)は「山奥にあの高さの石垣があるとは驚いた。工法など見る視点が変わりました」と話していた。

 松田所長は「高知城など県内の石垣を研究する上で貴重な史料。今後も文献などで調査を続けたい」としている。問い合わせは市文化財センター(0887・54・2296)へ。石垣までは道中の木に巻かれたリボンをたどって行けるが、急な山道を歩くため注意が必要。(深田恵衣)

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