2022.01.08 08:34
「自筆遺言保管」伸び悩み 周知進まず県内の申請140件 高知法務局 紛失・改ざん防ぎ安価
遺言には、公証人が携わり、公証役場に保管される「公正証書遺言」と、遺言を残す人自身が作成する「自筆証書遺言」の2種類がある。
自筆遺言は、遺言者が内容と日付、署名を自筆し、押印して自ら保管する。ただ、作成が手軽な半面、紛失したり、改ざんされたりする懸念もあり、親族間でトラブルになることも。
20年度、遺産分割を巡るトラブルで家庭裁判所に申し立てられた調停・審判は全国で約1万1千件、県内でも100件あった。
保管制度はこうしたトラブルを防ごうと、政府が20年7月から始めた。自筆遺言を法務局に預ける仕組みで、原本は遺言者の死後50年、電子データは死後150年、保管される。手数料は3900円で、最低数万円かかる公正証書遺言に比べると安価だ。
導入当初、高知地方法務局には問い合わせが多数あった。しかし新型コロナウイルス下のため、終活セミナーなどに出向く機会は限られ、申請は伸び悩んでいるという。
同局供託課の下元寛之・遺言書保管官は「利用者から『手続きが簡単でスムーズだった』という声を聞く。検討してほしい」と話す。
一方、保管制度は自筆遺言を預かる際、書式や署名、押印などの形式面はチェックするが、内容の有効性は審査しない点は注意が必要。このため必ずしも遺言通りの相続が実現しない可能性がある。
また、遺言者本人が法務局で手続きをする必要があり、寝たきりなどの人は難しい。一方、公正証書遺言の場合は、公証人が自宅や病院に出張できる。
県司法書士会の伊藤真会長は「資産の多寡にかかわらず、自分の気持ちを家族に残すために遺言書は作った方がいい」とアドバイス。遺言の内容などは、司法書士ら専門家に相談するようアドバイスしている。(馬場隼)