2022.01.05 08:00
【再生へ 外交】世界で深まる分断と対立
国際秩序は転換期にある。米国は中国を「唯一の競争相手」と位置付け、米中対立が軸となる時代を迎えた。冷戦後、米国が唯一の超大国として率いてきた民主主義と、専制主義的な動きを強める中ロや新興国との間で対立が深まっている。
その中国は、台湾の統一を目指す軍事的圧力を強めている。
ロシアは2014年にクリミア半島を一方的に編入し、ウクライナを武力で一体化しようとする動きをみせる。昨年末にかけて世界に緊張が走った。ロシア軍がウクライナ国境近くに9万人超の部隊を展開。欧米などは侵攻しないよう強く警告した。軍の一部は撤収したが、予断を許さない軍事的緊張が続く。
大国による力ずくの現状変更がまかり通る状況になれば、その先に世界を巻き込む戦争も想定されよう。欧米や日本などが協調し、こうした動きを抑え込む対応が欠かせない。
この年明け、米中ロ英仏の核保有五大国は核戦争回避に向けた初の共同声明を出した。とはいえ、核増強の動きが懸念される。
中国は核弾頭を搭載できる極超音速兵器の開発を進める。英国は核弾頭保有数の上限を引き上げた。米ロは核の近代化を急ぐ。
非保有国は反発を強めているが、双方が相対する核拡散防止条約(NPT)再検討会議は新型コロナウイルス禍で4度目の延期になった。
核軍縮協議が停滞する一方、核開発は加速している状況だ。核による挑発を続ける北朝鮮やイランへの対応も急がれる。
3月には核兵器禁止条約第1回締約国会議が予定されている。日本は「核保有国が参加していない」としてオブザーバー参加に慎重姿勢だが、唯一の戦争被爆国にしか果たせない核軍縮への役割があるはずだ。
今年は「人権」も外交のキーワードになる。中国による香港、新疆ウイグル自治区での人権侵害をはじめ、国家が国民を弾圧する行為に国際社会の対応が迫られている。
国軍がクーデターで全権を握ったミャンマーでは、アウンサンスーチー氏が再び軟禁され、民主派や市民らの虐殺がやまない。
アフガニスタンでは、イスラム主義組織タリバンの暫定政権下、女性の人権が危機に見舞われている。
ほかにもシリアやベラルーシ…。独裁が続く国では民主社会を支えるジャーナリズムへの迫害も激しい。
岸田文雄首相は人権外交を重視し、中谷元氏(衆院高知1区)が国際人権問題担当の首相補佐官を務める。国民を弾圧する国に人権を保障するよう、手法を駆使して働き掛けを強めてほしい。
日本では国民に米中対立への不安が広がり、安全保障上の警戒感も高まっている。ただ、中国とは経済などの結びつきが強く、欧米とは距離感や影響の度合いが異なる。岸田首相は独自の立ち位置を見極めて対応していく必要がある。