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2022.01.03 08:00

【再生へ 政治】国民の不信解消できるか

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 迎えた新年、政治は国民との溝を埋めることができるだろうか。昨年10月に発足した岸田政権は「信頼と共感」を掲げた。政治の現状が国民の信頼と共感を失っているという認識の裏返しにほかなるまい。
 この看板の実現に向け、政策としてどう肉付けしていくかが本格的に問われる年となろう。今夏には参院選もある。政治と有権者の関係を見つめ直したい。
 岸田政権に求められるもの。それは、8年9カ月に及んだ安倍・菅両政権から続く文脈の中で捉えなければならない。
 安倍政権は、代名詞である経済政策アベノミクスで株価や雇用情勢を好転させたものの、国民の所得などへの波及効果は限定的で格差を広げたとされる。安倍晋三元首相は効果を誇る一方、そうした問題点を国民に説明する姿勢を欠いた。
 安全保障などに関わる問題では、与党の数の力を頼み、国会を軽視する強権的な手法で議会制民主主義の根幹を揺るがせた。
 新型コロナウイルス対策に追われた菅政権は、対応が後手に回るケースが目立った。人流の抑制へ国民の理解を得るべき場面でも、説得力の乏しさは反発を招いた。
 両首相とも国会審議ではぐらかすような答弁を繰り返し、野党の臨時国会召集の要求にも応じなかった。異論を許さないかのような一方通行の政治姿勢は国会の緊張感を損なわせ、国民との溝を生んだ。
 岸田文雄首相は、そうした「官邸1強政治」のおごりに向けられた国民の視線を意識しているようにみえる。「聞く力」を強調するのはその表れに違いない。
 ただ、発足3カ月の政権運営には聞く力の柔軟さと危うさの両面が垣間見える。
 18歳以下の子どもへの10万円相当給付を巡り、現金とクーポンの併用から、現金一括給付の容認へと転換した。むろん、政策に不都合があった場合の方針変更はあっていい。
 一方で柔軟さが朝令暮改と同義となってしまえば、国民の混乱や政策判断への不信につながりかねない。聞く力には同時に説得力のある説明が欠かせない。岸田首相の言う「新しい資本主義」も具体像を示せなければ期待はしぼむ。
 信頼回復が急がれるのは野党も同じだろう。先の衆院選での野党共闘は共通政策で合意したとはいえ、政党間で安全保障など基本的な政策が大きく異なった。有権者が戸惑ったのは間違いない。
 今夏の参院選に向け、与党とがっぷりと四つに組む構図をどうつくり出すか。立憲民主党も泉新体制となり「政策提案路線」へとかじを切った。各党ともそれぞれの政策を早期に浸透させ、有権者に現実的な選択肢であり得ることを明らかにする必要がある。
 国会での議論、政治と有権者の間によい緊張感がなければ信頼や共感も生まれまい。有権者も政治と向き合い、その政策や言動をしっかりと吟味する姿勢が求められる。

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